対戦相手は熱海富士の、かわいらしい顔にごまかされているのでは…と思ってしまいますが、相撲はかわいくない。いや厳しい、そして強い。初めての役力士との対戦もこれまで通りの強さを見せつけました。身長差がある翔猿が相手なので頭でなく、胸から当たりました。対戦相手によって立ち合いを変えているのも今場所の好調の要因です。翔猿が右を差しに行ったのが幸いで、絶好の左上手を引けました。あとは前に出ながら豪快な上手投げ。幕内後半戦の一番で、土俵下で見ていた上位陣も、あんな勝ち方が出来るのか、強いぞ、と驚いたでしょう。

12日目の大栄翔に勝つようなことがあれば、残り3日間は全て大関と当てていいと思います。今、乗りに乗っている熱海富士です。3大関に当てなければ、このまま優勝でしょう。コメントも今どきの21歳。9日目に勝ち越しを決めた後、翌10日目の対戦相手が、同じ1敗の高安と聞いた時に「やったー」と喜んだそうですね。その意味が、高安に勝った相撲を見て分かりました。私たちの時代では考えられないことですが、相撲に打ち込む一生懸命な姿は好感しか持てません。残り4日、若さの勢いと、それを阻もうとする上位陣の意地に期待します。(日刊スポーツ評論家)