西前頭8枚目の熱海富士(21=伊勢ケ浜)が大関経験者の御嶽海を盤石の攻めで寄り切って2連勝を飾った。優勝同点と躍進した先場所に続き、幕内3場所目となる九州でも序盤から存在感を発揮する。その力の源は中学時代。同郷で静岡・熱海市出身の女子プロゴルファー渡辺彩香(30)とは同じトレーナーの下で練習を積んできた。弟のようにかわいがってくれた国内ツアー5勝の渡辺からのエールも励みに、先場所あと1歩で逃した史上最速優勝を目指す。

大関経験者の御嶽海を圧倒した。熱海富士は立ち合いすぐに左前まわしを取るが、差し手争いには勝てず、もろ差しを許す。それでも相手に何もさせず、左前まわし一本で構わず前に出続けて寄り切った。「落ち着いていけた。前に出られて良かった」と汗をぬぐった。

先場所は千秋楽の優勝決定戦で大関貴景勝に敗れたが、横綱不在の場所を盛り上げた。幕内2場所目で主役級の活躍。その片りんは中学時代から示していた。

静岡・熱海市の同郷で、女子プロゴルファー渡辺彩香とは中学時代、同じトレーナーの下でトレーニングに励んだ。恒例のメニューに約8キロの山登りコースを走るものがあった。当時すでに150キロ近い体重だったこともあり、ぶっちぎりの最下位になったが、あきらめず必ずゴールした。どんなにきつくてもあきらめない。不屈の姿勢は厳しい角界でいきている。

熱海富士を本名の朔太郎から「サク」と呼び「アヤカさん」と呼ばれていた渡辺は「涙を流しながら走っていた。絶対にあきらめずに完走する頑張り屋」と振り返る。ゴール後にたたえると「『ハイッ』と言ってニコニコしていて、すごいカワイかった!」と続けた。

「サク」こと熱海富士は「アヤカさんが覚えてくれているなんて…。もっと頑張ろう」と感慨深そうに顔をほころばせた。ゴルフのシーズンオフの来年初場所には応援に来てくれる予定。初日から2連勝も「長いっすね。まだ13番もありますから」と話したが、同郷のお姉さん「アヤカさん」の存在は大きな励みになりそうだ。【平山連】

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