またも初優勝はお預けとなった。

優勝した大関霧島を、1差で追っていた西前頭8枚目の熱海富士(21=伊勢ケ浜)は、関脇琴ノ若に引き落とされて11勝4敗。霧島の取組前に、優勝が決まる展開となった。大関貴景勝との優勝決定戦に敗れた先場所に続いて優勝に迫り、2場所連続となる敢闘賞を受賞。三役をうかがうところまで番付を上げると予想される、来年1月の初場所の雪辱を誓った。

初優勝の壁は高かった。熱海富士が初優勝を果たすには、(1)本割で琴ノ若を破る(2)霧島が貴景勝に敗れる(3)優勝決定戦で霧島に勝つという3つの関門があった。だが第1関門で夢はついえた。頭からぶつかったが圧力は伝わらず、1度離れた直後に二の矢で頭から突っ込むと、ひらりとかわされた。前のめりに倒れ込み、唇をかみながら立ち上がった。支度部屋では霧島の取組を放心状態のままテレビに視線を送った。「またダメだった…。今場所も上位では勝てない。厳しい」。独り言のようにつぶやいた。

ガムシャラに突っ走った先場所とは違った。霧島に直接対決で敗れた前日14日目に続き、優勝の懸かる一番。「先場所も決定戦を経験して、人よりも慣れているはず。緊張もしていなかった。でもダメだった。今のままじゃ来場所は勝てない」と実力不足を痛感した。「これより三役」も初体験したが「経験(不足)と言われるけど、経験は先場所もしている。自分は弱い。上位は強い。悔しいです」と自分を責めた。

後に横綱となる貴花田、朝青龍の所要24場所という史上最速優勝記録(付け出しを除く)に、今場所で19場所目の熱海富士が再び迫った。実力は本物。しっかりと将来の横綱候補に名乗りを上げた。上位総当たりの番付に上がる見通しの来場所へ「稽古しかない。そろそろ勝ちたいな、上位に」。大器は「三度目の正直」で来場所の賜杯を夢見ている。【高田文太】

【一覧】九州場所取組速報はコチラ