大関貴景勝(27=常盤山)の3度目の優勝に始まり、霧島と豊昇龍の大関昇進など、今年も大相撲はさまざまな出来事が起きた。今年の全6場所で幕内を務めた、30人の力士を対象とした年末恒例の「第12回日刊スポーツ大相撲大賞」は、そんな陰で生まれた好記録や珍記録を表彰する。

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今年の全6場所で幕内に在籍した力士の中で、一番あたりの平均時間が最も長い「相撲を楽しんだで賞」は、前頭翠富士(27=伊勢ケ浜)だった。全90日間皆勤し、合計の取組時間は1829・5秒。平均20秒33は、2位竜電の17秒55を3秒近く、3位霧島の15秒02を5秒以上も上回った。

中でも先月九州場所7日目の北青鵬戦は、幕内では8年ぶりの水入りとなる、合計で約6分40秒の熱戦だった。自身は174センチと関取衆屈指の小兵で、相手は現役最長身の204センチ。30センチも大きな相手に組みついて食い下がったが敗れ「疲れた…。千秋楽までの体力を使い切った。(まわしを引き続け)手もパンパン。握力が『2』ぐらいしかない」と、さすがのタフネスも苦笑いしきり。幕内の水入りは15年春場所の照ノ富士-逸ノ城戦以来だった。

翠富士は、60秒以上の取組が年間で7番あり、竜電と並ぶ最多だった。ただし90秒以上となると翠富士の5番に対し、竜電は0番。頭1つ抜けた長さだった。

反対に最も取組時間が短かったのは、平均4秒51の阿炎だ。2位阿武咲の5秒01、3位大栄翔の6秒03を抑えて2年連続で“スピードスター”となった。昨年の平均5秒07を約1秒も縮めただけに、来年はさらなる記録更新なるかも注目のポイントだ。【高田文太】