大横綱大鵬の孫、東前頭3枚目の王鵬(24=大嶽)が横綱初挑戦で金星を獲得した。

初めて顔を合わせた横綱照ノ富士を攻め続け、力勝負で寄り切った。祖父が大鵬、父は元関脇貴闘力でデビューから注目されてきた。自己最高位の今場所、大器がついに一花咲かせた。照ノ富士は2日連続の金星配給。東前頭筆頭の宇良が琴ノ若を肩すかしで3大関撃破。かど番の大関貴景勝は2敗目を喫した。

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波乱に熱狂した空気感が心地よかった。王鵬は「結び…すごい気持ちよかったですね」。初挑戦の横綱照ノ富士に真っ向から挑み、攻めて寄り切った。「(立ち合い)当たってからの内容を覚えていない。それぐらい集中していたと思う」。大横綱から脈々と受け継ぐ遺伝子が覚醒した。

デビュー前から注目のサラブレッドは、初めて番付に載った18年春場所で序ノ口優勝も、その後に目立った活躍とは無縁だった。22年初場所の新入幕から、幕内13場所目を自己最高位で迎えた。場所前は新大関琴ノ若らがいる佐渡ケ嶽部屋などへ積極的に出稽古。「自信とかじゃなく、やれることは限られている。それで通用しなければしょうがない」と悟りを開いた。

191センチ、176キロと恵まれた体の持ち主だが、四つなのか突き押しなのか、自身の相撲を探り、迷いも隠せなかった。その迷いを払拭(ふっしょく)するきっかけも稽古しかなかった。「上位陣と稽古すると自分に足りないものが分かる。それがいい方にいっているんじゃないでしょうか」。迷いを切り捨て気持ちを定めたことで、ひと皮むけてきたのは間違いない。

大横綱の祖父は13年1月に亡くなった。王鵬は12歳、その偉大さはまだおぼろげだった。横綱について「深く考えたことはないですね」。ただ対戦相手として、最高の地位として目指すところ。照ノ富士とは稽古場でも1度も胸を借りることはなかったという。「巡業の稽古場でも指名されることはなかったですね」。全く初めて胸を合わせるからこそ、全力で挑めた。

「イメージは作っていたが、どうなったか本当に覚えていない。帰って動画を見て(金星の)実感に変えたい」。この金星を躍進のきっかけにしたい。そして帰京後、「墓参りには行きたいですね」。偉大な祖父に報告する。【実藤健一】

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