「荒れる春場所」の主役は、幕内後半戦の土俵でも三役撃破で旋風を巻き起こした。

初土俵から所要9場所と史上最速タイのスピード出世(58年以降初土俵で幕下付け出しは除く)で新入幕を果たした東前頭17枚目の尊富士(24=伊勢ケ浜)は、ただ一人の全勝力士として三役初対戦となる小結阿炎(29=錣山)との一番に臨み、押し出しで快勝した。阿炎のもろ手突きを低い立ち合いでものともせず、たまらず阿炎が引いたところを、左をハズにあてがいながら押し出した。初日から無傷の9連勝。1場所15日制が定着した49年夏場所以降では、佐田の海(元小結)、魁聖(元関脇)に並ぶ2位タイの新入幕初日からの9連勝とし、単独トップをキープした。大鵬が持つ1位の11連勝まで、あと2とした。

その1番後に登場した、星の差1つで追っていた入幕2場所で西前頭5枚目の大の里(23=二所ノ関)は、関脇若元春(30=荒汐)と対戦。こちらはマゲさえも結えないスピード出世だが、勢いは衰えず、若元春を西土俵に寄り立て、得意の左を差されながらも構わず圧力をかけ、寄り切りで勝って勝ち越し決定の8勝目。新入幕を入幕2場所目が1差で追う展開に変わりはなかった。両者は10日目に、幕内後半戦の最初の取組で激突する。

横綱が休場し、優勝争いでこれ以上は負けられない2敗の大関陣は、新大関の琴ノ若(26=佐渡ケ嶽)が関脇大栄翔(30=追手風)を押し出して7勝目。貴景勝(27=常盤山)も翔猿(31=追手風)に対し、常に距離を取りながら、相手を正面に置いて冷静に取って押し出し。カド番脱出の勝ち越しに王手をかけた。だが豊昇龍(24=立浪)は、翠富士(27=伊勢ケ浜)に十八番の肩すかしを食い、3敗に後退した。一方、2勝6敗と苦しい土俵が続いている、残る大関の霧島(27=陸奥)は、小結錦木(33=伊勢ノ海)を寄り切って3勝目を挙げた。

9日目を終え、ただ一人の勝ちっ放しで9戦全勝の尊富士が単独トップ。1差で大の里が追う展開で、大関の琴ノ若、貴景勝と平幕の湘南乃海(25=高田川)の3人が2敗で追う。

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