“裸一貫”からの仕切り直しとなった。大相撲の元幕内北青鵬の暴力問題で、当面閉鎖が決まった旧宮城野部屋の力士が8日、転籍した都内の伊勢ケ浜部屋で「伊勢ケ浜部屋所属」として初めて稽古した。師匠を外れた宮城野親方(39=元横綱白鵬)は、自らの希望でまわしを締め、伊勢ケ浜部屋の部屋付き親方として初指導。最近はほとんどなかった姿で土俵周りで約4時間30分、その後も長時間部屋に残って力士と向き合った。角界一の約40人の大所帯となった「新生伊勢ケ浜部屋」とともに、宮城野親方も再出発を切った。

非公開の稽古でも、激しく体をぶつけ合う音が、絶え間なく外にまで漏れた。旧宮城野部屋勢が初合流。力士がほぼ倍増して行われた稽古は従来よりも30分早め、午前8時に開始。春巡業から一時帰京している横綱照ノ富士ら関取衆も参加し、午後0時半過ぎまで続いた。師匠の伊勢ケ浜親方(元横綱旭富士)は「みんな気合を入れて稽古していた。稽古時間を早めたけど、足りないかな」と、活気づいた様子を歓迎した。

同親方は、宮城野親方の様子について「ちゃんと、まわしを着けて指導していた」と明かした。土俵には入らなかったが、土俵周りで「まわしの取り方、切り方とかを教えていた」という。「まわしを着けて指導するのと、言葉で言うのは全然違う。『自分もしっかりやらないといけない』という気持ちがあってしていると思う。それを前に出していくのは大切。これからもそうやってほしい」と、手取り足取り指導することの大切さを理解し、実践していることを評価した。

さらに「45回も優勝しているし、横綱のスキルを力士たちに伝えてほしい。相乗効果でみんな強くなってくれれば」と、数々の歴代最高記録を持つ実績を、還元することを期待した。

宮城野親方はまわし一丁で約4時間30分、指導した後も夕方まで長時間、部屋に残って力士と対話を重ねた。伊勢ケ浜親方は「きちんと部屋持ち親方としてやっていけるように、話をしていこうかなと思う」と言及しており、力士と向き合うという師匠業も指導していくつもり。引退後は、ほとんどなかったまわし姿となった宮城野親方。近年は珍しい約40人の力士が所属する大部屋での初稽古で、希代の大横綱が再出発した。【高田文太】