大相撲で最高位小結の遠藤(35)が、現役引退を決意したことが判明してから一夜明けた28日、追手風部屋の前頭大栄翔(31)が、遠藤が部屋にもたらした功績の大きさを熱弁した。九州場所(11月9日初日、福岡国際センター)に向け、福岡市の部屋で再開したこの日の朝稽古後、取材に応じた。2人の関係は、遠藤の方が3学年上ながら、入門は日大卒業後の遠藤よりも、埼玉栄高卒業後の大栄翔の方が先。自身よりも1年遅く入門してきた遠藤を見て、衝撃を受けたと述懐した。
大栄翔 自分は高卒なので先に入っていたのですが、1年後に(遠藤が)入ってきて、めちゃめちゃ強くて、本当に1番も勝てなかったです。大学トップレベルで入ってきて「こんなに強いんだ」というのが、最初に稽古場で思ったことですね。やっぱり2場所で(関取に)上がって「もう関取!?」って思って(笑い)。自分にとって関取は、入門した時の夢だったので。だからこそ自分も意識を高く持てたと思います。
大栄翔が入門した時、部屋にはジョージア出身で当時十両だった黒海がいた。それが大栄翔の初土俵から8カ月後の12年秋場所で、黒海は引退した。部屋に関取が不在となって約半年後に、遠藤が入門してきた。
大栄翔 関取がいない稽古場って、もちろん関取を目指してはいるんですけど、目標として現実的に見ることができないんですよね。そこに遠藤関が入ってきて刺激を受けて、自分も強くなりましたね。遠藤関との稽古が一番、力がついたなと思います。1番勝ちたい。勝ちたいの前に、ちょっとでも前に攻めたい、チョットでも突きたい。そういう考えでしたね、最初は。間近で見ていて、ストイックなところ、相撲に対する気持ちがすごかった。「自分から、こうやって望んでやっていくんだな」と、勉強になりました。プロってやっぱり、自分との戦いなので。自己管理、自分に厳しくやっていく姿勢。自分の意識が、どんどん変わっていきましたね。身近にそういう人がいて、お手本でしたね。
遠藤が関取になって以降、部屋からは他に翔猿、剣翔、大翔鵬、大翔丸、大奄美、日翔志らが、次々と関取に昇進していった。現在でこそ伊勢ケ浜部屋に譲っているが、追手風部屋が、関取在籍数で全部屋トップの時期もあった。
大栄翔 十両も1場所(通過)ですからね。普通は、十両に上がったら「次は幕内を目指す」という感じなのに、1場所ですからね(笑い)。遠藤関が入ってきて、部屋全体が底上げされたというか、みんな強くなりましたね。いなかったら、自分も幕下で満足はしていなかったかもしれないですけど、常に上の人がいるというのは、すごくいい環境でした。その日、1番勝てただけでも「今日は遠藤関に勝てた」と、自信がつきましたね。
まだ日本相撲協会から正式に、引退は発表されていない。それだけに大栄翔も、遠藤が引退することを信じたくないような様子を、随所にのぞかせていた。「肌と肌を重ねることで、勉強になることばかり」というだけに、遠藤との稽古ができなくなるかもしれない、さみしさを感じているようだった。
遠藤は7月に右膝、9月に左膝と、慢性的に痛めていた両膝を相次いで手術し、リハビリ生活のため、九州入りできていない。12年以上にわたり、関取を務め続けた功績に、大栄翔は「本当にすごいことですよね」と、しみじみと語った。離れていても、あらためて存在の大きさ、部屋にもたらした功績の大きさを感じている様子だった。

