大関安青錦(21=安治川)が、遅ればせながら今場所初の連勝を飾り、5勝5敗と星を五分に戻した。両手を相手の両肩に、あてがうようにして低い姿勢で立つと、前頭平戸海の圧力を吸収した。じりじりと後退したが、右を差して組み止めると、さらに前進して距離を詰めてきた相手に左上手を引いた。そこから左足をはね上げながら上手投げ。裏返した平戸海を土俵にたたきつける、鮮やかな“一本勝ち”で会場を沸かせた。
横綱昇進の懸かった場所で初日から勝ち負けを繰り返し、6日目からは3連敗を喫した。今場所後の横綱昇進は、事実上消滅。優勝争いも圏外となった。取組後、東の支度部屋で風呂から出ると、直前に風呂から出た2敗の横綱豊昇龍に報道陣が群がっており、自身のところで待っていたのは6人だけ。安青錦は思わず「少なっ!」と言ったが、もちろん冗談めかしてのもの。今場所初ともいえる、天真らんまんな笑顔を見せていた。
「中に入りたかったし、どちらかというと守りの相撲になったけど、落ち着いてチャンスを待った。(投げは)迷いなくいきました」と、明るい口調で振り返った。
3敗目を喫した6日目、4敗目を喫した7日目と、報道陣の取材に応じていなかった。ただ5敗目を喫した後からは、どこか吹っ切れたように報道陣への対応も再開。「吹っ切れた部分もあるのですか?」と質問すると「吹っ切れた、って何ですか」と、初めて聞く日本語は、何でも習得したい、持ち前の知識欲も復活し、自然体だった。この日は冗談めかした言動もあり、21歳の好青年らしい受け答えに終始した。
「毎日、新しい気持ちでやっていきたい」。一喜一憂していた連敗中よりも、明らかに精神的に一皮むけていた。「明日からも、いい相撲を取りたい」。観衆が喜ぶ姿を見ることがうれしい、生粋の相撲好き、相撲マニアの素顔が、やっと戻ってきた。【高田文太】

