AKB48渡辺麻友(23)が26日、東京・秋葉原のAKB48劇場で卒業公演を行った。盟友の柏木由紀(26)らと学舎(まなびや)での最後のパフォーマンスを披露した。大みそかのNHK紅白歌合戦を最後にグループを卒業して、今後は女優業に専念する。

 今までのどの卒業生よりも、最後の曲の歌い出しを渋った。公演中は努めて明るくしていた渡辺も、後輩横山由依からの手紙で泣かされた。「うれしい、ありがとう…」。そのままスピーチに入ると、なかなか締めようとはしなかった。

 渡辺 AKBを辞めるんだなぁって実感が今、ぐわーっときて。決断したのは自分ですけど、AKBがすごく大好きだから本当に寂しくて、寂しい、寂しいです…。ヤバイね、次歌ったら終わっちゃうんだね。

 柏木 だから(話を)延ばしてるの?

 渡辺 そう、終わりたくないから。

 寂しげなほほ笑みで認めると、最後はイヤリングまで落として、時間を引っ張った。ラストは、約12年前にテレビで初めて見てAKBを知った、渡辺の運命を変えた曲「桜の花びらたち」。名残惜しくて、再び涙がこぼれた。

 オープニングはリラックスして臨めた。渡辺所属のチームBの代表曲「初日」。幕が開くと、舞台の15人の仲間に「みんなストレッチ! アキレス腱(けん)伸ばして」と声をかけて、円陣。10月31日のさいたまスーパーアリーナでの卒業コンサートでは涙を流した思い出の曲を、あえてユーモアにして、しんみりしがちな卒業公演を、笑いでスタートさせた。

 ユーモアさは、観客も心得ていた。男性客も含めて、みんながツインテールのお面で座った。10代の渡辺のトレードマークの髪形だ。渡辺も「すごい。みなさん、何でツインテールなの? 変態だから?」と驚いた。渡辺の気持ちをよく理解したサプライズだった。

 ノースキャンダルに加えて、ルックスやパフォーマンス、性格と渡辺の全てが、正統派アイドルとしてAKB48の12年の歴史上でも最高傑作だった。格言は「自分を強く持ち、自分を信じて周りに流されないこと」。毎日の自制心とたゆまぬ努力こそが、ファンに夢を与え続けられる。渡辺は、デビューからの3916日で証明しきって、学舎にお別れした。残すは、30日の日本レコード大賞とNHK紅白歌合戦のみ。日本中に見守られてフィナーレを迎える。【瀬津真也】