11日公開の「THE BATMAN ザ・バットマン」は、犯罪との戦いを始めて2年目の若き日のバットマンを描いている。

主人公の大富豪ブルース・ウェインはまだ30歳。社交界のメンバーとしても、もう1つの顔バットマンとしても日が浅く、試行錯誤感があって、そこが見どころの1つになっている。

DCコミックの中でも不動の人気を誇るダークなヒーロー像は、クリストファー・ノーラン監督=クリスチャン・ベール主演の「ダークナイト」3部作で極まった感があるが、マット・リーヴス監督=ロバート・パティンソン主演で仕切り直しとなった今作はより硬派に「生身のバットマン」が描かれる。

「デビュー2年目」のバットマンは悪党との戦いにもまだ不器用さが残り、格闘シーンのパンチの応酬は、真芯を外している分だけリアルに痛そうだ。パティンソンは「トワイライト」シリーズの美青年の印象が強く、痛々しさにより実感がある。ベールやその後のベン・アフレック版に比べても、よりストイックにとがった感じがする。

空飛ぶシーンにムササビスーツ風のアイテムが登場するなど、リーブス監督は「現実」を巧みに折り込んで、説得力を持たせるすべにたけている。ノーラン版とは趣を変えながら、こちらもパワーを実感させる中盤のバットマンカーの登場、そして終盤の大パニックと、ボルテージを上げながら2時間55分の上映時間を飽きさせない。

原作(39年)の時代をほうふつとさせる街並みを背景に、一方ではSNSがあり、バットマンが駆使するアイテムには近未来的なハイテクも混じる。が、そんな都合の良い設定も気にならず、不思議な統一感がある。

敵役はナゾナゾでバットマンと警察をあざ笑うリドラー。「リトル・ミス・サンシャイン」(06年)のポール・ダノがこのクセの強いキャラを好演。SNSを駆使する今風の若者のイメージをうまく重ねている。

コリン・ファレルのペンギンは「アンタッチャブル」(87年)でロバート・デ・ニーロが演じたカポネを思い出させ、ゾーイ・クラビッツのキャット・ウーマンのキレキレのアクションも魅せる。

続編を見たくなるリーヴス=パティンソン版の幕開けだ。【相原斎】(ニッカンスポーツ・コム/芸能コラム「映画な生活」)

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