アメリカのエンターテイメント業界の人たちにとってもっとも権威があり、誰もが憧れる賞といえば、放送業界で栄誉とされる「エミー賞」、ミュージック界最高峰の賞「グラミー賞」、映画界でもっとも権威のある通称オスカーと呼ばれる「アカデミー賞」、そして演劇界でもっとも名誉な賞「トニー賞」の4つがあります。そして、ショウビズ界ではこの4つのEGOT(「Emmy」「Grammy」「Oscar」「Tony」の頭文字をとって)を全て受賞する快挙を成し遂げたパーフェクトエンターテイナーたちがいます。

先日行われたクリエイティブ・アート・エミー賞授賞式で、歌手のジョン・レジェンドが製作指揮兼主演を務めたNBCテレビの特別ミュージカル番組「ジーザス・クライスト・スーパースター・ライブ・イン・コンサート」でバラエティ・スペシャル部門を受賞。これによって、黒人男性として史上初となるだけでなく、最年少でのEGOTを達成したエンターテイナーとなりました。さらに、同作品で作曲を手掛けた作曲家のアンドリュー・ロイド・ウェーバーと作詞家のティム・ライスも同時にEGOTを達成し、3人が同時にEGOTの仲間入りを果たす史上初の快挙となりました。これまでEGOTを達成したエンターテイナーはわずか12人。一体どんな人たちが、ショウビズ界のグランドスラムを手にしているのでしょう。3人の同時受賞で15人となったEGOT受賞者の顔ぶれを紹介します。

◆リチャード・ロジャース(作曲家)

1962年に史上初となるEGOTを成し遂げたのは、「サウンド・オブ・ミュージック」や「王様と私」などの名作ミュージカルを作曲したリチャード・ロジャース。45年に「ステート・フェア」でアカデミー賞作曲賞、50年代から60年代初めにかけて6つのトニー賞、60年と62年にグラミー賞を受賞。62年にはテレビドキュメンタリーの音楽でエミー賞にも輝き、史上初の4冠を成し遂げEGOTという言葉が生まれました。さらに、ロジャースはミュージカル「南太平洋」で印刷報道・文学・作曲に与えられるピューリッツアー賞も受賞しており、世界でたった2人しかいないPEGOTでもあります。

◆オードリー・ヘップバーン(女優)

1994年に史上5人目として達成したのが「ローマの休日」(53年)や「ティファニーで朝食を」(61年)などで知られるオードリー・ヘップバーン。ハリウッド進出作となった「ローマの休日」でアカデミー賞主演女優賞に輝き、翌年にはブロードウェイ劇「オンディーヌ」でトニー賞主演女優賞を受賞。そして、他界後に放送されたドキュメンタリーでエミー賞(93年)を、翌年にはおとぎ話を朗読したアルバムでグラミー賞(94年)を獲得し、史上初めてにして唯一の死後のEGOT受賞者となりました。

◆ウーピー・ゴールドバーグ(女優・歌手・コメディエンヌ)

史上初のアフリカ系の受賞者となったのが、「天使にラブ・ソングを」(92年)などで知られるウーピー・ゴールドバーグ。1985年に舞台を収録したアルバムでグラミー賞を受賞したのを皮切りに、5年後に「ゴースト/ニューヨークの幻」(90年)でアカデミー賞助演女優賞を、02年にはトニー賞とエミー賞を連続受賞してEGOTを達成。

◆ジョン・レジェンド(歌手)

06年に3つのグラミー賞を受賞したジョン・レジェンドは、15年に映画「グローリー/明日への行進」でアカデミー賞主題歌賞を受賞。そして昨年は共同プロデュースした舞台劇でトニー賞に輝き、今回のエミー賞受賞で弱冠39歳という若さで誰もが憧れるEGOTの栄光を手にしました。

【千歳香奈子】(ニッカンスポーツ・コム/芸能コラム「ハリウッド直送便」)