16歳で歌手デビューし、90年代後半から2000年代半ばにかけて一世を風靡したブリトニー・スピアーズが、自身の成年後見人制度に関する審問で後見人である父親から避妊を強制されて妊娠ができないことなどを赤裸々に語り、「自分の人生を取り戻したい」と訴え、久しぶりにメディアの注目を集めています。

ブリトニー・スピアーズ(2003年12月撮影)
ブリトニー・スピアーズ(2003年12月撮影)

スーパースターとして世界中のファンを魅了したスピアーズは、かつては私生活でもお騒がせセレブとしてメディアを賑わせていましたが、2019年にラスベガスの定期公演をキャンセルして休業を発表して以降、第一線から姿を消していました。そんなスピアーズが、「子宮内避妊器具(IUD)を取り外すことができず、結婚して赤ちゃんを産むこともできない」「無理やりメンタルヘルスの治療施設に入れられた」「仕事を強要され、クレジットカードや携帯、パスポートなどすべて没収された」など、13年にも及ぶ成年後見人制度下での生活を自らの言葉で語ったことは、大きな衝撃を与えています。

現在39歳で、アーティストとして大成功を収め、50000万ドルの資産を持ちながら、なぜ08年から現在に至るまで実父ジェイミー氏に資産や生活全般を管理されるようになったのでしょう。

1998年にリリースしたデビュー曲「ベイビー・ワン・モア・タイム」が大ヒットしたスピアーズは、全世界で915万枚の売上を記録して瞬く間にトップスターとなり、輝かしい人生を歩み始めます。2000年代に入ると露出度の高い衣装で当時のアイドル界に革命を起こし、00年には当時同じくアイドルだったジャスティン・ティンバーレイクとの交際でもマスコミの注目を集めます。しかし、トップアイドル同士の交際は長くは続かず、02年に破局を迎えます。

スピアーズは当時、「処女」を公言していたものの破局時にティンバーレイクが「初体験の相手だった」と暴露し、スピアーズの浮気が破局の原因だったと示唆する楽曲をリリースしたことで、清純派のイメージから一転して性に奔放なイメージが付きまとうことに。結婚まで噂された恋人からの仕打ちに傷ついたことが、その後の人生の転落の始まりになったともいわれています。

破局後はアーティストとしては、セクシーな衣装やダンスで過激なパフォーマンスを繰り広げてセクシー路線で成功を収める一方、私生活では04年1月に酔った勢いで幼馴染の男性とラスベガスで電撃結婚し、奇行が目立つようになります。酔いがさめて正気に戻ったスピアーズは、「冗談が行き過ぎてしまった」として直後に婚姻無効を申請し、結婚生活はわずか55時間で終わりを迎えます。

しかし、わずか55時間の夫に多額の慰謝料を支払う羽目になったスピアーズは、その年の9月に今度はバックダンサーだったケヴィン・フェダーラインと電撃略奪婚し、翌年には長男ショーン・プレストン君が誕生します。さらに06年に次男ジェイデン君を授かるも出産からわずか2カ月で破局を迎え、離婚調停の末に共同で親権を持ち、スピアーズが慰謝料を支払うことで07年3月に離婚が成立しました。

フェダーラインとの破局が原因で精神を病んだスピアーズは、離婚が成立する直前にロサンゼルスのヘアサロンで自らバリカンを手に取って髪を剃りあげ、丸坊主にするという衝撃的な事件が起こり、スキンヘッドで手に持っていた傘でパパラッチの車に殴りかかるなど、様々な奇行がメディアを席巻するようになります。

薬物やアルコールの依存症も取りざたされ、07年には無免許で当て逃げした容疑でも告発され、裁判でフェダーラインと共同で所有していた親権を失ってしまいます。裁判所から薬物検査やカウンセリングへの出席を命じられ、元夫に配偶者サポートして毎月2万ドルの支払いも行うことになったスピアーズに対し、精神状態の不調を理由にジェイミー氏が「娘の資産と健康を守るため」と裁判所に後見人制度の適用を申請して現在に至ります。

歌手活動を一時休止して精神病院に入院して治療を受けたスピアーズは、09年に世界ツアーを敢行して完全復活を果たし、13年末からラスベガスでの定期公演もスタートさせるなど、全盛期と変わらぬパフォーマンスで再びトップスターとして活躍。

波乱万丈な私生活でのトラブルを乗り越え、第一線に復帰したスピアーズでしたが、19年にジェイミー氏の健康問題を理由に再び歌手活動を休止すると発表し、それ以降はSNSにダンスする動画や自撮り写真、ダンサー兼トレーナーの恋人サム・アスガリと過ごす様子などを公開する以外は表舞台からは遠ざかっています。しかし、今回の告白によってそんなSNSでの幸せそうな投稿も嘘で、長年に渡って「幸せな自分」を演じていたに過ぎなかったことが判明したのです。

18年に生死をさまよう大病を患ったジェイミー氏は、自身の健康を理由に後見人を一時的に退き、その後はケアマネジャーを務めていたジョディ・モンゴメリー氏が一時的に後見人を務めていましたが、成年後見人制度適用の終了を巡る審議で飛び出したのが、「父によって奴隷のような日々を送っている」という衝撃的な暴露だったのです。

スピアーズは16年にミュージックビデオでの共演をきっかけに交際に発展したアスガリとの再婚と、子供を授かることを望んでいることも制度の終了を訴える要因になっています。しかし、父親は娘の精神状態を理由に「資産を悪用されたり、騙されたりしないために後見人制度の継続が必要だ」と訴えており、裁判所の判断に注目が集まっています。

ネットでは今年40歳になる娘を支配する父親への抗議の声が多く上がっており、#FreeBritney(ブリトニーを解放して)と呼びかける運動が広がりを見せ、ティンバーレイクをはじめマライア・キャリーらセレブ仲間も次々と支援の声を上げています。

「娘は認知症」とまで主張する父親と、「IUDを外して子供を作りたい」と訴える娘のバトルの行方に世界中が注目しています。【千歳香奈子】(ニッカンスポーツ・コム/芸能コラム「ハリウッド直送便」)