8日にエリザベス女王が死去したことに伴い、世界の関心が英王室に集まっています。特に注目を集めているのが、米国に移住したヘンリー王子とメーガン妃夫妻と王室との間に起きている問題です。チャールズ新国王の即位宣言で、英国にとって約70年ぶりとなる新たな君主が誕生しましたが、これから19日に執り行われる国葬までメディアはヘンリー王子夫妻の一挙手一投足を追いかけることになるでしょう。

ヘンリー王子とメーガン妃(2019年6月撮影)
ヘンリー王子とメーガン妃(2019年6月撮影)

そんな2人の出会いから結婚、王室との対立まで改めて歴史を振り返ってみました。

ロサンゼルス生まれのメーガン妃は、王子と出会う前はテレビドラマ「SUITS/スーツ」に出演するなど女優として活躍。2011年に7年の交際を経て結婚した映画プロデューサーでタレントマネジャーのトレヴァー・エンゲルソン氏との離婚歴があるバツイチです。

メーガン妃とヘンリー王子の出会いは、2016年7月。共通の友人がセッティングしたブラインドデートだったといわれています。当時、王子はドラマを見ておらず、メーガン妃のことをよく知らなかったそうですが、2人はすぐに意気投合したといわれています。後に王子はBBCのインタビューで、一目ぼれだったと明かしており、2人は多忙なスケジュールの合間を縫ってロンドンで逢瀬を重ねるなど遠距離恋愛をスタートさせました。

婚約を発表したのは、出会った翌年の11月27日。婚約発表から数時間後にそろってBBCの番組に出演し、アフリカのボツナワに一緒に旅行に出かけたエピソードや、11月初旬に自身が暮らすケンジントン宮殿のノッティンガムコテージでローストチキンを作りながら、ひざまずいてプロポーズしたことなどを明かし、テレビ女優から妃となるシンデレラストーリーは当時大きな話題となりました。

そして2018年5月、ウィンザー城のセント・ジョージ礼拝堂にて盛大な結婚式が執り行われ、世紀のロイヤル・ウェディングにはメーガン妃の親友で女子テニス界のスター、セリーナ・ウィリアムスやベッカム夫妻、ジョージ・クルーニー夫妻ら豪華なゲストが参列し、世界中が熱狂しました。翌年5月6日には長男アーチー君が誕生。アメリカ人を親に持つ初めての子供の誕生は、王室の歴史に新たな1ページを刻みました。

しかし、結婚後はその自由すぎる振る舞いや、王室ルールを無視したファッションや言動に批判が殺到。メディアや国民からバッシングを受けることとなり、メディアとの対立も深まっていきます。そんな中、2019年にはアーチー君が誕生して初めてのクリスマスをロイヤルファミリーとではなく、自身の母と祝ったことで王室との確執が浮き彫りに。王室の伝統では、ロイヤルファミリーは毎年クリスマスをエリザベス女王の別邸サンドリンガム・ハウスで過ごすことが慣例となっていますが、ヘンリー王子とメーガン妃はアーチー君を連れて11月末から長期休暇を取ってメーガン妃の母を伴ってカナダに渡ったことで、2人に対する世間の風当たりがより強くなっていきました。

帰国した2人は翌年1月、インスタグラムで高位のロイヤルファミリーから退き、パートタイムで公務を行うと宣言。突然の高位王族脱退宣言は王室を揺らす出来事となりましたが、英国とカナダで半々の暮らしをしながらパートタイムで公務をこなしたいという2人の希望は女王によって却下され、王族の称号の使用を認めず、王室公務からの完全引退が決定しました。そして2020年3月に王室を離脱した夫妻は、メーガン妃の生まれ故郷であるロサンゼルスでの新生活をスタートさせたのです。

王室を離脱してアメリカに移住するという前例のない選択をした夫妻に批判が殺到する中、アメリカに戻って自由になったメーガン妃はメディアで王室批判を始めます。中でも世間に大きな衝撃を与えたのが、昨年3月にCBSテレビで放送された人気司会者オプラ・ウィンフリーとの独占インタビューでした。2人は番組の中で、アーチー君の誕生に際して「生まれてくる子供の肌の色」について王室内で人種差別的な発言を受けたと暴露し、王室での暮らしで自殺を考えるまで追い詰められたことなどを赤裸々に語り、番組での爆弾発言が原因で、父チャールズ国王やウィリアム皇太子との関係が修復不能になるほど悪化したことがメディアを通じて伝えられています。しかも番組が放送されたのは、祖父フィリップ殿下が体調を崩して入院している最中だったことから、2人は国民のひんしゅくを買っただけでなく、良好な関係にあるといわれていたエリザベス女王も心を痛めていることが取り沙汰されることとなりました。

その後、死去したフィリップ殿下の葬儀に参列するためヘンリー王子が離脱後初めて単身で帰国するも、「苦しみを経験した」と公然と子育てを批判した父や不仲説がささやかれてきた兄との間に生じた溝を埋めることはできず、兄弟の確執が改めてクローズアップされることに。その後も昨年6月に生まれた長女に女王の愛称であるリリベットちゃんと名付けて物議を醸し、英国滞在中の警察による公式警護を求めて英政府を訴えるなど、歩みよりは見られないまま2年の時が過ぎています。

今年6月に女王の即位70周年を祝う祝賀行事に参加するため離脱後初めて家族そろって帰国し、エリザベス女王とリリベットちゃんの面会を果たすもツーショット撮影を拒否されたことが報じられ、最終日を待たずひっそりと帰国したことも話題になりました。

10日、ウインザー城の前で姿を見せたヘンリー王子とメーガン妃(ロイター)
10日、ウインザー城の前で姿を見せたヘンリー王子とメーガン妃(ロイター)

そんなヘンリー王子は、女王の葬儀で軍服を着用することは認められないだろうといわれていますが、敬愛する祖母の死を目の前に、家族の中で1人だけスコットランドのバルモラル城を訪れるのが遅れるなど、王室との対立が根深いことも改めて浮き彫りになっています。メーガン妃は最近のインタビューで、「許すためには多くの努力が必要」と発言するなど王室批判を続けており、王子も年内に出版を予定している回顧録で新たな爆弾を投下する可能性も取り沙汰される中、女王の死去をきっかけに家族が歩みよることができるのか世界中が注目しています。

【千歳香奈子】(ニッカンスポーツ・コム/芸能コラム「ハリウッド直送便」)