16万人が加入する全米映画俳優組合が、14日からストライキ入りし、ついに63年ぶりとなる全米脚本家協会との同時ストライキという最悪の事態を迎えてしまいました。
脚本家組合はすでに今年5月からスト入りしており、一部のテレビ番組や映画の撮影が中断されたり、延期されるなど影響が出ていましたが、俳優組合もストに加わったことで事実上ほぼすべての撮影やプロモーション活動がストップ。長期化すれば経済損失は5000億円に上るとの声も出ています。
今回のストライキの背景や影響、スト中の俳優ができることとできないことなど、現地から最新情報をレポートします。
■俳優組合のストは43年ぶりとなりますが、何が起きているの?
ネットフリックスやウォルト・ディズニー、パラマウントなど大手映画会社が加入するAMPTPとの契約更新に合わせて交渉を続けてきましたが、更新期限までに合意に達することができず、期限を延長して臨んだ交渉でも溝が埋まらず、14日からスト入りすることが決まりました。
ハリウッド俳優というと、1本の映画で数億円を稼ぐイメージを持っている方も多いと思いますが、それはごく一部のトップスターだけで、大半の俳優は日給150ドル程度で働く「バックグラウンド(エキストラ)」と呼ばれる中流階級の労働者です。今回のストはそうしたギリギリの生活を送る俳優たちが生活の保障を求めているものであり、トップスターたちがギャラの増額を求めているわけではありません。
■原因と主な争点は?
俳優組合が前回ストライキを行ったのは1980年で、当時は劇場用映画がビデオ化される際の再使用料を巡っての争いでした。そして、さらにさかのぼると1960年には今回と同様に俳優組合と脚本家組合が同時にストを行っており、その結果として劇場用映画がテレビ放送される際の再使用料に関するルールができたと言われています。しかし、ストリーミングの台頭によってこうした再使用料の収入は年々減少しており、生活が苦しい俳優が増えていることが今回のストの主原因となっています。
報酬の増額や福利厚生の改善などを求めている今回のストの主な争点は、「再使用料の増額」と「人工知能(AI)」の2つです。
1つ目は、DVD化されたり、テレビで放送されるたびに支払われてきた再使用料がストリーミングの台頭によって激減している俳優たちへの新たな保障です。視聴回数に応じた報酬の支払いなど新たなルール作りを求めています。
2つ目は、AIに仕事を奪われないための保証です。具体的にいうと、スタジオ側が1日のギャラで俳優を雇い、スキャンすることでそのデータを自由に使って映画が作れてしまうというようなことに反対しています。それが現実になると俳優という職業そのものが、AIに取って代わられる可能性があり、妥協できないというのが俳優側の主張です。
ジョージ・クルーニーが、声明で「多くの俳優や脚本家が生計を立てる能力を失っている。私たちの業界が生き残るためには、状況を変えなければならない」と語っているように、まさにストリーミングの時代になった今、ハリウッドは大きな転換期を迎えているわけです。
【千歳香奈子】(ニッカンスポーツ・コム/芸能コラム「ハリウッド直送便」)





