連載「われら第7世代!~演歌・歌謡曲のニューパワー~」の望月琉叶(25)の第2回は「三刀流への道」です。前回、三刀流をダイジェストで紹介しましたが、今回はより深く探ります。家系は3代続けての歌手志望。そして美川憲一(75)がキーマンで、海外ボランティアなどで広げた視野も影響しています。日刊スポーツ笹森文彦記者が迫ります。

大きな瞳が印象的な望月琉叶(撮影・中島郁夫)
大きな瞳が印象的な望月琉叶(撮影・中島郁夫)

現在、演歌歌手、アイドルグループのメンバー、グラビアの三刀流で話題となっている望月は、両親が美容院を経営していた。店にはいつも演歌・歌謡曲系の有線放送が流れ、自然と耳に入る生活だった。さらに母方の祖父、そして母も、かつては歌手志望だった。

望月 祖父は流行歌手になりたくて、どなたかのお弟子さんになっていたそうです。詳しくは分かりませんが(師匠は)有名な方だったらしいです。私が生まれた時にはもう亡くなっていたそうです。そして母も演歌歌手になりたかったそうで、その夢を受け継ぐ形で私も、と思うようになっていきました。

3世代続く歌手志望で、3歳から音楽教室に通いピアノと歌を習った。勧められたわけではなく、自ら行きたいと願った。歌は唱歌などをみんなと一緒に歌っていたという。

望月 ある程度ピアノを弾けるようになった後は、映画「千と千尋の神隠し」の主題歌とか、自分の好きな音楽の楽譜を取り寄せて弾いていました。遊び感覚でやっていたら、後ろ手で弾けるようになって(デビュー後)テレビ番組でも披露させていただきました。特技です(笑い)。

小学校高学年になり、演歌歌手になりたいという漠然とした気持ちが、より明確になった。そのきっかけは、美川憲一のヒット曲「柳ケ瀬ブルース」だった。

望月 YouTubeで何かの文字を入力して検索していたら、美川憲一さんの「柳ケ瀬ブルース」が出てきて。美川さんを探そうと思ったわけではなくて、出てきて、いらっしゃった(笑い)。聴いたら「演歌って大人の世界でカッコイイ」とあらためて思って。より演歌に目覚めるきっかけになりました。

中学生になり吹奏楽部に入った。腹式呼吸など今につながる練習を積極的に行った。カラオケで同級生がモーニング娘。や大塚愛を歌う中、望月は美川憲一を歌った。

望月 「何で演歌なの?」って笑われたこともありましたが、全然気にしなかったですね。

高校生になるとオーディションを受けたり、スカウトされることもあった。チャンスもいくつかあったが「演歌歌手になりたい」という確固たる思いはぶれることがなく、方向性が違うと断った。誘いに流されることなく、自分で切り開こうと決意していた。

一方で、高校時代には米英の有名大学に短期留学をして語学を学んだ。東洋大社会学部に進学すると、マレーシアでボランティア活動も行った。

望月 語学研修は両親が理解して行かせてくました。ボランティアは赤十字関連で、現地の子供たちに献血など赤十字の活動に興味を持ってもらうようにプレゼンするものでした。もちろん演歌歌手になる気持ちは薄れていませんでしたが、ボランティアを通じて自分の知らない世界を見ることも、今しかできない、絶対、将来の糧になると思いました。演歌って日本の中だけで止まるべきものではないんじゃないかという思いや、将来、海外で歌いたいという気持ちもあったので。

思いが通じたのか、大学4年の時に「演歌を世界へ」を合言葉に、海外公演も行うアイドルグループ「演歌女子ルピナス組」(現・民族ハッピー組)にスカウトされた。加入の際に「将来、ソロの演歌歌手になりたい」と伝えた。そして希望通りに昨年7月22日に「失恋慕情」(作詞・小林元、作曲・樋口義高、編曲・周防泰臣)で演歌歌手としてデビュー。キャッチフレーズは「グラビアもできる演歌歌手」で、数々の雑誌で水着姿などを披露している。

現在、演歌や歌謡曲は、昭和の全盛期に比べると低迷していると言わざるを得ない。そんな中「第7世代」と呼ばれる若い歌手が、その魅力を同世代にも伝えようと頑張っている。

望月 演歌は日本の文化ですし、衰退してはいけないと思っています。私も第7世代のみんなと力を合わせていきたいと思います。演歌を聴いて涙を流す若い方もいらっしゃいます。あまり聴かないジャンルの歌を聴いたことによって、新鮮味を持って聴いてくれていると感じます。

「三刀流」の各分野でそれぞれ魅力を発揮しており、確実にファン層は幅広くなっている。そこに迷いや戸惑いはないという。

望月 「演歌女子ルピナス組」からスタートしたので、(ファン層は)演歌を好きな方がもともと多かった。私のファンにもなってくださった方が、引き続き演歌歌手の活動を応援してくださっています。20代から50代、60代と、いろんな年齢層の方がいらっしゃいます。演歌で私のことを知ってくださった方が、グループのファンになってくださることもあります。そしてグラビアも楽しんでくれればうれしい。違和感はまったくありません。

「民族ハッピー組」のライブを終えてホッと一息した表情を見せる望月琉叶
「民族ハッピー組」のライブを終えてホッと一息した表情を見せる望月琉叶

コロナ禍でコンサートなどほとんどできなかったが、所属レコード会社「日本コロムビア」が9月8日に行う「第75回マンスリー歌謡ライブ」(東京・古賀政男音楽博物館けやきホール)に出演予定だ。久々の有観客ライブで、第2部(午後5時30分開演)に門松みゆき、彩青と出演する。

望月 (コロナ禍で)配信もやらせていただいていますが、やはり1人でも多くの方に、実際の歌唱を届けたいという気持ちがすごく強いです。とても楽しみです。(つづく)

次回は29日配信予定。

望月琉叶の新曲「面影・未練橋」のジャケット
望月琉叶の新曲「面影・未練橋」のジャケット

◆望月琉叶(もちづき・るか)1996年(平8)7月15日、神奈川県生まれ。18年にアイドルグループ「演歌女子ルピナス組」に加入。19年8月に「民族ハッピー組」と改名後もメンバーとして活動中。演歌歌手として20年7月に「失恋慕情」でデビュー。今年4月28日には第2弾の新曲「面影・未練橋」(作詞・幸田えり、作曲編曲・樋口義高)を発表。2作連続でオリコン週間シングル演歌・歌謡曲ランキングで初登場1位を獲得。「週刊プレーボーイ」「フライデー」などのグラビアで水着姿などを披露。趣味は音楽鑑賞、創作ダンス。特技は絵を描くこと。153・5センチ、スリーサイズはB83-W58-H82センチ。血液型A。

「われら第7世代!~演歌・歌謡曲のニューパワー~」は毎週日曜更新です。