先日、第28回読売演劇大賞の作品賞、男優賞など5部門のノミネート作品などが発表され、男優賞ではジャニーズWESTの小瀧望(24)が選ばれました。

小瀧は昨年10月の主演舞台「エレファント・マン」での演技が評価されての受賞ですが、男優賞には人間国宝の片岡仁左衛門(76)大谷亮介(66)城田優(35)山崎一(63)が名を連ねており、唯一の20代である小瀧の若さが際立ちます。

「エレファント・マン」は醜い容姿に生まれ育った青年メリックを主人公にした作品で、81年公開の映画もヒットしています。私もこの舞台を見ましたが、過去に市村正親、藤原竜也という演技派が演じており、舞台経験の浅い小瀧には荷が重いのではと思っていました。しかし、そんな心配は杞憂(きゆう)に終わりました。異形ゆえに「エレファント・マン」と呼ばれ、過酷な運命に翻弄(ほんろう)されながら、その心は誰よりも美しく、優しい青年を見事に演じていました。メリックの心そのままに誠実で真摯(しんし)に演じる姿が、清々(すがすが)しく感じました。体をひねった不自然な体勢での長時間の演技でしたが、読売演劇大賞の選考会では「体の使い方が抜群に美しい」という声が上がったそうです。

ジャニーズ事務所の先輩では、04年、09年、18年に岡本健一(51)、16年に56の坂本昌行(49)が優秀男優賞に選ばれ、岡本は18年には最優秀男優賞も受賞しています。元SMAPの草なぎ剛(44)も在所中の06年に優秀男優賞と、若手を対象にした杉村春子賞を受賞しています。

ジャニーズWESTの仲間では、松本白鸚主演「アマデウス」でモーツァルトを演じ、昨年のシアターコクーン公演「泣くロミオと怒るジュリエット」に主演した桐山照史(31)、新橋演舞場の中村芝翫主演「オセロー」で今井翼の代役でイアーゴーを見事に演じた神山智洋(27)が舞台でも活躍しており、大いに刺激になっているのでしょう。

私も参加した106人の投票委員の投票でノミネートされた5人の中から最優秀賞が選出されますが、発表は2月初めの予定です。小瀧は同舞台の公開稽古の取材会で「僕の俳優人生のターニングポイントになる作品」と語っていましたが、投票の結果はともあれ、小瀧は舞台俳優として確かな「爪痕」を残したと言えるでしょう。 【林尚之】(ニッカンスポーツ・コム/芸能コラム「舞台雑話」)