そのリズム、精神は心をうっとりさせる。1999年に製作された、キューバの老音楽家らによるバンド「ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ」を追った同名の伝説的ドキュメンタリー映画の続編。現メンバーが決行する最後のツアーに密着し、生い立ち、音楽遍歴、死にも迫った。

 前作は長く忘れられていた老ミュージシャンが結集し、米ニューヨークのカーネギーホールで演奏するまでを繊細に描いた。柔らかく、深みのある歌声のイブライム・フェレールは12歳のとき母親を亡くし、孤児に。不運が重なり、1度は音楽と絶縁した過去を語り、「ブエナ・ビスタ」に誘われた当時は靴磨きで生計を立てていたことを明かす。後半ではイブライムら数人がこの世を去ったことが告げられる。

 前作に比べ、音楽シーンは少ないが、メンバーのルーツを映像資料で丁寧に肉付けしている。90歳手前にしてスポットライトが当たり、95歳で逝去したコンパイ・セグンド。最晩年で大輪の花を咲かせた自らの人生にだぶらせた言葉は味わい深い。

 「わしらは遅咲きだが、人生の花はだれにも必ず訪れるのさ」

【松浦隆司】

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