主人公の悟(福士蒼汰)が猫を飼えなくなり、引き取り手を求めて猫と旅をする。この設定が、普段は行動範囲は半径数百メートルという猫の、ほぼほぼ日本縦断ロードムービーを成立させた。

飼い主を探すという未来に向かう話でもあり、転校続きだった少年時代の知り合いを訪ねて回るという、悟の過去をたどる話にもなっている。設定と物語の進展が自然で、すーっと世界観に入っていける。

ここ最近、アクション作品のイメージが強い福士が、猫だけに心を許すような静かな青年を演じているのが新鮮だ。なぜ猫が飼えなくなったのか、その理由が分かると、どこか達観したような、透明なものを見つめているような表情にも納得がいく。

もう1人(1匹)の主人公でもある猫ナナの動き、表情がいい。心の声を入れたのは説明過多かなとも思ったが、進むにつれて切なくなる物語を、高畑充希の声が優しく和らげてくれたような気もする。

動物もので必ず泣いちゃうような人は、この作品でもやっぱり泣いちゃうのでは。最後は決まって、こんな相棒がいてくれたらなあ、と思うのだ。【小林千穂】

(このコラムの更新は毎週日曜日です)