18世紀のイングランドを舞台に、アン女王(オリヴィア・コールマン)の愛を得ようと、女官長レディ・サラ(レイチェル・ワイズ)と侍女アビゲイル(エマ・ストーン)が、壮絶な駆け引きを繰り広げる。

日本時間25日発表の米アカデミー賞に作品賞をはじめ、9部門10ノミネートされている注目作。コールマンが主演女優賞に、ワイズ、ストーンはそれぞれ助演女優賞候補に挙がっているように、女優3人の火花の散らし合いだ。

アン女王の深い孤独とあきれさせるほどのわがままさをチャーミングに演じたコールマンと、超がつくほどの冷徹ぶりを見せるワイズ、成り上がっていくさまを体当たりで演じたストーン。3人それぞれが主演と言ってもいいくらいだ。

それにしても、悲しい愛憎劇だった。しょせんは宮廷の中で生きるしかできなかった女たちの物語。時折見せる彼女たちの空虚な表情が切なかった。

じわじわと不安をあおる音楽、魚眼レンズの多用など、時代ものとしてはかなり新鮮。驚くのはすべてを自然光で撮影していること。建物や風景、人物がより立体的に、今に近い感覚で浮かび上がってくる。【小林千穂】

(このコラムの更新は毎週日曜日です)