第2次世界大戦後の1945年(昭20)、身に覚えのないスパイ容疑でロシア・シベリアの強制収容所に収容され、過酷な労働の日々を送った山本幡男さんら抑留者の実話を映画化した。
主演の二宮和也の、役として生きるための妥協なき取り組みと、芝居の巧みさへの評価は映画界において絶大だ。今作で特に出色なのが、終戦から8年後に病魔に侵された山本を演じた姿。アイドルとは一線を画した、こけたほお、ひげ面といった外見にとどまらず、かすれきった声を絞り出す姿は、実際に病であると思わせるに十分だ。その全てが、抑留者仲間を演じた松坂桃李、Sexy Zone中島健人、桐谷健太、安田顕との芝居のぶつかり合いを、より厚みのあるものにしたであろうことは映像からもにじみ出ている。
抑留者の過酷な日々が強烈に描かれるのと比較して、北川景子が演じた妻モジミら、山本を待ち続けた家族の描写が少ない。抑留者が過酷な日々を生き抜く唯一の希望だった、家族が何を思って待ち続け、生きたかが、もう少し描かれたならば、鑑賞後の感動は、より深まったのではないか。
昨年12月に撮影を終えて間もない今年2月、ロシアのウクライナへの軍事侵攻が始まり、公開後の今も続いている。そうした時節柄、この映画は観客にどう受け止められるのだろうか。【村上幸将】(このコラムの更新は毎週日曜日です)




