役所広司は一体、どこまで突き進んでいくのだろう…。そんな感情にとらわれるほど、21年の「すばらしき世界」の劇中で、出所した元殺人犯として生きる姿は突き抜けていたし、スクリーンから飛び出して世界へ走りだしてしまうほどのエネルギーを感じた。

その役所が「みんな、筋が違う顔を持っていて何か、面白い」と語るのが「ファミリア」だ。愛知県瀬戸市の窯業の家に生まれた脚本のいながききよたか氏が、在日ブラジル人が多く住む環境で育った自身の身近な題材や、事件を元に物語を構想。差別やヘイトクライムといった問題を真正面から取り上げた。役所は山里に1人で暮らす陶器職人、初共演の吉沢亮が演じた息子は一流企業のエンジニアでアルジェリアに赴任中という設定で、物語は日本からテロを含めた世界の問題にまで広がる。

ラップグループ「GREEN KIDS」のシマダアランをはじめ、出演した在日ブラジル人は演技未経験なだけに、みずみずしく生々しさにあふれている。近年「じいさんになってきました」などと口走る役所だが、次代の日本映画界を担うであろう吉沢を含め、若手との邂逅(かいこう)で燃えたのだろう。アクションシーンも60代半ばとは思えないほど力強い。新春から“男・役所”を全身で浴びるのも、悪くない。【村上幸将】

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