「茶飲友達、募集」と書かれた新聞の三行広告…その実態は、登録した男女に売春をあっせんする高齢者売春クラブだった。2013年(平25)10月に警視庁が摘発した驚きの事件に着想を受けた、外山文治監督がプロデューサーを兼任し、脚本から作り上げた。

実際の事件は会員男性1000人、女性350人の平均年齢は60歳前後で、最高齢は男性88歳、女性82歳、売春防止法違反容疑で逮捕された男性経営者も70歳と高齢者の事件だった。映画は主演の岡本玲演じる高齢者専門売春クラブの経営者、運営側を若い世代に置き換え、高齢化社会と低賃金などで先行きが見えず行き場のない若い世代という、日本社会が抱える2つの課題を巧みに織り込んだ。

何より秀逸なのが人間ドラマだ。確かに売春は違法だが、枯れていた男性客は満たされ、コールガールも金銭面で潤い、不安を抱えた若い運営側と祖母と孫のように結び付く。かりそめでしかなく、間違ってはいても、心に欠損のある人々が救われる…そんな社会の矛盾も映画は問いかける。

外山監督は30代から高齢者をテーマに製作を続ける一方、20年の前作「ソワレ」では、閉塞(へいそく)感を抱えた若者の逃避行を描いた。社会性を帯びた物語の中に、観客の心の中に感情を激しく揺さぶる何かを落としていく…そうした作品を作る監督が、これからの日本映画には必要だ。【村上幸将】

(このコラムの更新は毎週日曜日です)