囲碁の最年少プロで、大阪の小学4年生の藤田怜央初段(10)が「世界一」を目指し、韓国へ単身武者修行の計画が進んでいます。10歳の少年の「強くなりたい」という強い思いを家族、師匠、関係者らがサポートします。

思わぬ“ラブコール”でした。昨年12月、韓国で行われた非公式戦に参加した藤田初段の対局に連日、熱視線を送る人物がいました。世界最強といわれる申真■(シン・ジンソ=23)九段らを育てた韓鐘振(ハン・ジョンジン)九段でした。韓九段はソウルで道場を主宰し、申九段を始め、多くの強豪を育てました。3月に韓国に移籍する仲邑菫三段も勉強した道場です。

韓国のレジェンド・■(■は十の下に日を二つ縦に並べ、十の縦棒が一つ目の日を貫く)薫鉉(チョ・フンヒョン)九段(70)の9歳7カ月を抜く、9歳4カ月での世界最年少のプロとなった藤田初段は韓国でも注目されていました。

「10歳のときの申と同じオーラがある」。韓九段は藤田初段に「世界一」の可能性を感じたようです。この言葉がきっかけとなり、今年1月1日から約1カ月間、理学療法士の父、陽彦(はるひこ)さんともに、韓九段の道場に泊まり込みで、武者修行しました。一昨年8月のプロ入り会見で、藤田初段は尊敬する棋士として申九段の名前を挙げていました。

師匠の星川拓海五段は韓国武者修行の計画を進める前に、弟子に意思を確認しました。「うん!」。「珍しく、怜央が力強く、うなずいたんですよ。これは行かせてあげないといけない」。韓国の道場は同世代の子どもも多く、レベルも高い。今回の武者修行では、朝から夜まで練習対局をしたり、AI(人工知能)を使って検討をしたり、囲碁漬けの日々を送ってきたといいます。

藤田初段の昨年の成績は7勝10敗。プロとの真剣勝負の中で「勝ったり負けたりを繰り返し、確実に成長している。今年は飛躍へ大事な1年となる」と師匠。

プロとの実践を重ねながら、韓国でのハイレベルな環境の中での研究も選択肢の1つです。韓国では子どもたちが囲碁修業に専念する環境が認められているといいます。寮に住み込み、長期間修業し、活躍する日本の棋士も増えてきています。

初めての韓国武者修行に「楽しかった」と藤田初段。師匠によると、本人に再度、「うん!」を確認した上で、「単身武者修業」の計画を進めるといいます。世界一へ、第2弾は長期間になりそうだといいます。

※■=言ベンに婿のツクリ

【松浦隆司】(ニッカンスポーツ・コム/コラム「ナニワのベテラン走る~ミナミヘキタヘ」)