千葉雄大がテレビ朝日系ドラマ「おっさんずラブ-in the sky-」(土曜午後11時15分)でぶっきらぼうな航空会社副操縦士を熱演中だ。現在30歳。“かわいい”と見られることをどう感じているのか。「面倒くさい自分の性格」に向き合う千葉の言葉の端から実直な人柄が見えてきた。

★一からみんなで

昨年放送され「流行語大賞」トップ10入り、各ドラマ賞を総なめした人気作の新作に新キャストとして参加する。気負いはない。

「『新しい気持ちで作りたい』というお話をしていただいて。途中参加っていうより、一からみんなで作るものとしての『おっさんずラブ』なのかなって。誰かのポジションを自分が担うっていうことではないのかなと思ったので、自分らしくできたらいいかなと」

ドラマは航空会社が舞台。性格に難あり、口の悪い副操縦士、成瀬竜を演じている。

「突拍子もないっていうか、ガッといったと思ったらスンッて引く猫みたいな人。うわさだとちょっとあて書きみたいなところもあるって聞いたので、そういうことなんだと思います(笑い)」

成瀬は、田中圭演じる主人公春田創一に一方的にキスし「キスくらい誰とでもしますから」と乱暴に言い放つ。役柄と千葉の印象にはギャップがある。

「皆さんが思ってくださっているイメージとは違っているところはあるかもしれないですけど。でもかわいい人ではあると思います。すごくまっすぐで不器用なところもありつつ、一生懸命頑張っている人だと思うので」

男性同士の恋が題材だが、男女の恋愛ドラマと変わるところはないと考える。

「いろんな人がいていいと思うし。こういう(同性同士の)ジャンルもフラットになっていくのではという気持ちもある。意識しない方がいいのかなって思います。意識するとデフォルメしてやっちゃいそう。過剰な感じ。でも人を好きになる時って、なろうとしてなるっていうよりはなっちゃうものだと思うから」

★面倒くさい性格

大学時代に男性ファッション誌の読者モデルをしていたが、俳優になるとは思っていなかった。

「アルバイト感覚だったので、表に出る仕事はそこまで考えてなかったです。どっちかっていうと裏方がやりたかった。テレ朝とか企業説明会行きましたよ。映画会社とか」

就活中にスカウトされ、初オーディションで特撮ドラマ「天装戦隊ゴセイジャー」の主演に選ばれた。事務所所属から半年とかからなかった。

「何も分からないまま始まった感じがあります。レッスンを積んできたわけでもないし。『ゴセイジャー』で学んだことは今でも抜けないですし、基礎だと思います。人との接し方だったり、現場に臨む姿勢とか、作品はみんなで作るものという意識を勉強しました」

学生時代は「地味でしたよ」と話す。一方で表現欲求を抱え、性格を「自己顕示欲の激しい引っ込み思案」と分析する。

「何かやらかしたいと思ってました。そういう衝動みたいなものを抑えてました。面倒くさい子供だったと思うし、今もあると思うんですけど。内弁慶は小さい頃から言われてました。嫌ですね(笑い)」

複雑な性格は自認しており「世間話が苦手」という。

「話題豊富だったらいいんですけど、多趣味じゃないしな、とか考えてる間に待ち時間が終わってひと言も話せなかったり。頭の中ではいっぱいおしゃべりしてるんですけど、全部取捨選択して何も出せないっていうか」

反省点は自分の中に探すという。

「その方が改善しやすくないですか? 人を動かすのは難しいですけど。自己肯定感が低いのかも。でも、この仕事をして変わった部分もあると思います。これでもしゃべれるようになったし、マシになったと思います。『昔は借りてきた猫みたいだったね』って言われる。今より声も小さいし」

★汚い自分見たい

来年2月にデビュー10周年を迎える。

「スカウトだし、読者モデルだし、軟派なイメージを持たれると思ってはいたんですけど。それは嫌だなと思っていたので、長く続ける覚悟で臨みました。やめたいと思ったことはないですね」

現在30歳。「かわいい」という世間の評価を客観的に見ている。

「それでご飯を食べてきたところもあるので(笑い)。でも変わってますよね。昔のほうが、かわいかったですよ。老けたと思います」

嫌気が差すこともあったが、求められる「かわいい」からは逃げたくなかったという。

「嫌だったんです、もうそういうのやりません、みたいになるのは。そういうの欲しいって言われたらそうするべきじゃないですか? 『笑え』って言われたら面白くなくても笑わなきゃいけない仕事で、どうしたら笑えるのかすごく考える。『かわいいのやって』と言われたら、こうしたら面白いとか、やりすぎたらステレオタイプに戻ろうとか、やりようによって楽しめる。苦とか、最近は考えたことないですね」

最近「かわいい」を求められる場面が減った。

「それは事実としてあると思います。(年齢に)見えないことが仕事に役に立つこともあるんですけど、個人的にはしわができたりとか(肌が)下がってくるとか、汚くなった自分も見てみたい。美しくないところの美しさはあると思います。それで仕事がなくなったら、自分はそれだけの人だったんだと思うし」

ドラマ、映画の出演作は70本超。最近、主演作が増えているが、臨む姿勢は変わらない。

「演じる上ではサブとかメインとかないと思っていて。6番手で呼ばれても、手を抜いたことなんて1度もないし、せりふが多くても少なくてもやることは一緒と思ってきたので。面白いと思う作品をみんなで作るっていう楽しさの方が大事かな」

現場を引っぱる座長像はしっくりこないようだ。

「だって、できないですもん、行くぞ! とか。ギアを入れてみるかって思った時もありますけど、自分がすさむっていう。つらい時に奮い立たせて明るく振る舞うことはありますけど、引っぱっていくだけが全てじゃないかなって」

控えめな回答が千葉らしかった。【遠藤尚子】

▼田中圭(35)

いろんな面があって絶対に面白いのに、自分のキャラにこだわらなければと思ってるような感じでいて、実際のところはそうでもない。少し保守的なところがある人です。現場ではせりふ通り言う人が少ないので、雄大も台本にない言葉を生み出してくれるのですが、50%の確率で目がおびえています。雄大が生きている成瀬がとても魅力的で、迷いながらお芝居をしている姿勢が大好きです。自分も迷うし、みんなで迷ってみんなで答えを作り出したいです。だからこれからも変わらない雄大で現場を思い切り楽しんでください! 最高です。

◆千葉雄大(ちば・ゆうだい)

1989年(平元)3月9日、宮城県生まれ。大学在学中に男性ファッション誌の読者モデルとして活動後の10年にテレビ朝日系「天装戦隊ゴセイジャー」でデビュー。17年映画「殿、利息でござる!」で日本アカデミー賞新人俳優賞。19年NHKドラマ「盤上の向日葵」など主演。20年主演映画「スマホを落としただけなのに 囚われの殺人鬼」公開予定。血液型O。173センチ。

◆おっさんずラブ-in the sky-

航空会社「天空ピーチエアライン」が舞台。新人CA春田創一(田中)を中心に、機長黒沢武蔵(吉田鋼太郎)、副操縦士成瀬竜(千葉)、整備士四宮要(戸次重幸)の複雑に絡まり合う恋愛模様をコミカルに描く。

(2019年11月17日本紙掲載)