歌に演技に、実直に攻めて、第一線を走り続けてきた。観月ありさ(45)。歌手デビュー30周年を記念した、11年ぶりのオリジナルアルバム「Ali30」を15日に発売。15歳から連続ドラマ30年連続主演を続けてきたそのそばには、ずっと大切にしてきた「音楽」があった。【大友陽平】

★30年連続連ドラ主演

歌手デビューの節目を迎えている。「短かったようで長かったような。長かったようで、短かったような…」と振り返りつつ、歌手として、もちろん役者として。10代の頃から第一線を走り続けてきた理由が、この言葉に凝縮されている。

「最近、周年で昔の映像を見返す機会が多いんですけど、10代の頃の自分があまりに勇ましく戦っていて…。自分で言うのもなんですけど、1人で頑張ってるんですよ! そんな過去の自分に背中を押されるというか、『忘れてた、この攻め感!』みたいな…。やっぱり戦い続けないと! って思うんです」

4歳でモデルデビュー。物心ついたときから芸能界に身を置いた。一番やりたかったのが「歌」だった。

「歌いたい! というのが、実は出発点です。小学生の頃から、周りに音楽をやっている人も多くて、すごいミュージシャンの方たちが来るようなレコーディングスタジオに遊びに行っては、大貫妙子さんとか、杏里さん、ユーミン(松任谷由実)さんの曲を吹き込んだりしていたんです。昔から両親の影響で洋楽とかもすごく聞かされて育って。興味を持つのがすごく早かったんです」

★91年「伝説の少女」

だからこそ14歳の時に「伝説の少女」で歌手デビューが決まった時のことは、今でも鮮明に覚えている。

「それまでモデルを10年くらいやっていたのに『よ~し! これから私の芸能人生が始まる!』ぐらいの感じでした(笑い)。(事務所の)社長にカラオケで杏里さんの『オリビアを聴きながら』とプリンセス プリンセスの『Diamonds』を聞かせて、『いいね』と。いや、歌をやりたくて入ったんですけどって(笑い)」

★96年「ナース」転機

その後は、演技と歌を両立させていくことになる。92年にフジテレビ系「放課後」で初主演以来、30年連続連ドラ主演と現在も記録を更新中だが、“主演ドラマ+主題歌”という形が定番だった。

「主題歌を歌わせていただくことで、モチベーションが上がるというのはありました。10代の頃とかは、たくさん主演をやらせてもらっているのにもかかわらず、『もう無理、もう無理』みたいな感じだったんですよ…。自分がそんなにお芝居に向いてるとも思っていなくて。だから音楽がモチベーションになって、ドラマを続けられたというのもあったんです」

ともに楽しさを感じられるようになったきっかけは、96年にシリーズがスタートした「ナースのお仕事」。「それまでは大人びていたり、謎めいてる少女役が多かったんですけど、『ナース』をやり始めてすごくハマりが良くて。松下(由樹)さんとの相性もあったと思うんですけど、やっていくうちにキャラクターを作るということが楽しいなって思い始めました」。

多忙なドラマ撮影の合間に、新曲発売やライブも開催するなど、常に挑戦してきた。両立してきたからこそ、相乗効果もあった。

「ドラマは撮影も地道にコツコツやっていきますし、レコーディングしてる時もそうなんですけど、“孤独”なんですよ。でもライブをやれば、こういう表情で見てくれているんだとお客さんの顔を実感できたり、逆にお客さんに気持ちで引っ張られる部分もあって、楽しいんですよね! お芝居に関しては、歌っていたおかげか、のども強いですし、お芝居を音で捉えるところがあって、せりふのトーンも耳なじみを良くしようとか、役柄によってキーを上げたり下げたり…。役立ってますね」

話を聞いていて、エンターテインメントをとことん追い求める人だと感じる。自他共に認めるほど「マジメ」な性格だ。

「好奇心旺盛で、いろいろなことをするのがとにかく好きなんです。それがエネルギー源にもなっています。舞台を見に行っても『こうやって歌うんだ』とか、他のアーティストさんの曲もよく聞くし、気になります。例えば、最近の皆さんは、私たちの時代と言葉の発音が違います。私たちはすごく明確に、きれいに発音しないと怒られた世代なんですけど、今はこう、英語風に発音するというか。それでグルーブ感も出しているんだと思います。そういうのを研究しちゃうので、疲れちゃいますけど(笑い)。新しいものを常に取り入れていくというか、自分をアップデートしていくのはとても大事なことだなって思うんです」

★11年ぶりオリジナル

11年ぶりのオリジナルアルバム「Ali30」でも「懐かしいサウンド感も、新たに今のサウンドで作っていたり、懐かしい感じと、今っぽさみたいなものがうまく融合されている曲がたくさん集まっています」と、さらにアップデートした観月ありさを表現した。リード曲の「サジタリウス」は、若手ロックバンド「Novelbright」が制作した。

「ストレートなメッセージ性のある曲です。若い方々が、観月ありさをどう表現してくれるのか? どういう視点で描いてくれるのか? ということに、すごく興味がありました。アップテンポなんですけど、ノスタルジックなにおいもして。私は女性目線の歌詞が多かったので、今回は男性目線の歌詞で、新鮮だと思います」

同曲の歌詞には「さあ、夢を、射(う)て さあ、君の、未来へ」とある。

「お芝居もそうなんですけど、歌うことも毎回難しいですし、いつまでも完璧にはならないです。多分、ずっと完璧を求めて模索していくんだろうと思いますが、その完璧を、その時々で目指していきたいですし、ずっと攻めていたいし、新しいことに貪欲になっていたいと思います。これまで頑張ってきたことが今に生かされているわけで、だから今も頑張っていないと、10年、20年後も頑張れないですから」

どこまでもまっすぐな思いは、さらなる未来にも一直線だ。

▼親交が深いDREAMS COME TRUE中村正人(63)

ありちゃんは、我々がありちゃんのために書き下ろした楽曲「あなたが笑えば」の「あなたが笑えば このめちゃくちゃな世界でさえ なんとかなる気がしてくる あなたが笑うだけで そばにいる人をこんなにつよくさせるって ねえ知ってた?」という歌詞にあるように、ありちゃんの存在自体に全人類が救われる。その笑顔の裏に、光も闇も全て抱え生きるんだという覚悟が、私の心をつかんで離さない。期待すること? 何も期待しません。なぜなら、観月ありさはいつも私たちの想像を超えてくるから。ドリカムは永遠に「ありちゃん推し」です。

◆観月(みづき)ありさ

1976年(昭51)12月5日、東京都生まれ。4歳でモデルデビュー。10代の頃は宮沢りえ、牧瀬里穂とともに「3M」と呼ばれた。91年5月「伝説の少女」で歌手デビューし、同年に日本レコード大賞新人賞。「TOO SHY SHY BOY!」などヒット曲多数。女優としては同年11月「超少女REIKO」で映画初主演。連ドラは92年にフジテレビ系「放課後」で初主演以来、30年連続主演の自己記録を更新中。代表作はフジテレビ系「ナースのお仕事」シリーズなど。170センチ。血液型A。

◆「Ali30」(アリサーティー)

30周年記念の約11年ぶりオリジナルアルバム。リード曲「サジタリウス」、BEGIN島袋優作曲の「ありきたりなキセキ」、小室哲哉がリアレンジの「TOO SHY SHY BOY!(TK SONG MAFIA MIX)」など15曲収録。15日発売。