専科スターの凪七瑠海(なぎな・るうみ)は、花組ミュージカル「ロマンス 蘭陵王(らんりょうおう)-美しすぎる武将-」に主演。美貌ゆえ、仮面を着けて戦ったという中国の伝説の皇族役に臨んでいる。凪七はイメージを「アジア版オスカル」ととらえ、役作りに励んできた。シアター・ドラマシティ(大阪市)で上演中、28日まで。KAAT神奈川芸術劇場は12月4~10日。

16年9月に専科へ移り、自分を磨く時間を得た。「お稽古も久しぶり。リズムに慣れるのに時間がかかり…」と笑いながら話す。

今作は、6世紀の中国を舞台に、美貌、武術ともに長じた皇族武将を演じる。美しすぎたがゆえ、兵士の士気を下げないために仮面を着けて戦ったという逸話が残る「蘭陵王」だ。

「もともと中国、台湾でドラマ化され、日本へも4~5年前に。知り合いの方に46話あるDVD全編をいただいていたんです」

今回、台本では、生きるために強さを求め、冷徹で貪欲な人間らしい部分も描かれている。

「私は、強く男らしい中に繊細さを感じて、『アジア版オスカル』のようなイメージを持ちました。外見は中性的でも、中身はスッと芯が、針金のように細くも鋭い芯が通っている」

共感も覚えた。凪七自身、下級生時代に「エリザベート」でヒロインに抜てきされるなど、女役もこなしてきた。「私も、いかにも-っていう男役ではないけど、性格はサバッとして引きずらない」と笑う。

半面、舞台に対する神経質な一面も自覚する。

「稽古中は24時間、舞台のことを考えちゃう。急に夜中に目が覚め(浮かんだアイデアを)忘れないうちに-と携帯にメモし、下級生にメールもしちゃったりする(笑い)」

仕事への取り組みは、専科へ移っても不変。ただ、オフの過ごし方は一変した。昨年4~6月、ニューヨークへ「プチ留学」した。

「午前中は語学学校へ通い、午後からダンスやボイストレーニング。宝塚とは違う学びでした。新鮮で衝撃的。ブロードウェー作も20本ぐらい見ました」

技術とともに内面も磨かれたという。

「語学学校では同じレベルでも、他国の方は、知っている単語を並べ、コミュニケーションをとろうとする。この気持ち、すごく必要。演技でも、私はこれをこう演じたいと、思いを提示することが大事。いい意味で貪欲になった」

今年は、肉体のケアに留意するようになった。「レモン酢」などをとり、劇団レッスンで受けていたピラティスの資格も得た。

「レッスンの時から体にいいんだろうなと思っていたけど、どの筋肉にどう効いているのか、ちゃんと学びたくなった」

ケガをしにくく、しなやかな体作りは、今作の激しい殺陣にも生かされた。「(主人公のように)『生きるか死ぬか。生きろ』って思いながら、稽古をしてきました」と言う。

専科へ移っての初主演にも「作品の中で蘭陵王として生きることが結果、主演(の立場)につながっていく。この役としての生き方をまっとうしたい」。豊かな経験を武器に、心身ともしなやかに美しく、センターに立つ。【村上久美子】

◆メーク、かつらは、中性的ながら武将の強さを出そうと「長くても、きれいにまとまりすぎないように」と意識。美貌を表現すべく、まゆ毛を細く、目元の赤いラインにもこだわり「普段の中国作は目尻ですけど、目頭の下に」入れた。凪七が預かる花組メンバーのトップは、別の劇場で主演公演けいこ中の同期、明日海(あすみ)りお。「(組子に)失礼があったら、ごめんね~と言われた」と、明日海の口調をまねて明かし、同期愛をのぞかせた。

◆ロマンス「蘭陵王(らんりょうおう)-美しすぎる武将-」(作・演出=木村信司氏) 6世紀の中国に実在した北斉の皇族・高長恭に与えられた王号が「蘭陵王」。武勇に優れるとともに、あまりの美しさゆえ、兵士の士気が下がることを恐れ、戦場では仮面を着けて戦ったとの伝えがあり、雅楽「蘭陵王」や京劇の演目にもなっている。親に捨てられ育った少年が鍛錬に励み、美しく、高潔で勇猛な武将へと成長。自らの命をねらう娘と出会い、ともに過酷な幼少期を過ごした2人に絆が芽生える。雅楽師の東儀秀樹氏による楽曲も注目される。

☆凪七瑠海(なぎな・るうみ)11月11日、東京都生まれ。03年入団。宙組配属。09年に月組「エリザベート」へ特別出演し、男役ながらエリザベートに異例の抜てき。同年「カサブランカ」で新人初主演。10年「ジュ シャント」でバウ初主演。13年1月に月組異動。14年「THE KINGDOM」大阪、東京特別に主演(美弥るりかとダブル)。15年、専科轟悠主演「オイディプス」でヒロイン。16年9月専科。身長170センチ。愛称「カチャ」「エリカ」「ガチャガチャ」。