宙組の新トップ娘役、潤花は「うそ偽りなく」を肝にすえる。同組トップ真風涼帆の2人目相手娘役に迎えられ、真風のポリシーに従い決めた。6月下旬に兵庫・宝塚大劇場で開幕した「シャーロック・ホームズ-The Game Is Afoot!-」「デリシュー!-甘美なる巴里-」が本拠地お披露目で、宝塚公演は2日に終えた。東京宝塚劇場は21日~9月26日。

宙組新トップ娘役に着いた潤花
宙組新トップ娘役に着いた潤花

トップ娘役として迎える初の本拠地作。宙組全員での稽古は「怒濤(どとう)の日々。1日があっという間で、緊張している暇はなく、真風さんの大きな器に助けていただいた」。

芝居では、真風演じるシャーロック・ホームズの心を動かすアイリーン・アドラーを演じる。「鋼の精神と言いますか、宝塚の娘役としては、なかなかないお役。学びと、生きがいを感じています」と言い、稽古から励んできた。

作品にからむ本や、漫画も読み、イメージをふくらませた。実生活とはかけ離れているゆえ「お稽古場では毎日、アイリーンに乗り移り、アイリーンとして生きよう」と心がけた。その心意気が「生きがい」との表現になったと笑った。

「アイリーンは、いろんな男性を手玉にとって、振り返らない男性はいない-みたいな(笑い)。誰もが目を引く美しさ、ホームズと対等になれる女性。私とはかけ離れています」

役柄を掘り下げ、なりきろうとするタイプ。「集中力が一番大事」ととらえる。真風の役作りからも、学んだ。「お稽古の時点から数分ごとに、歩き方、座り方ひとつ、変えていらっしゃる」。仕事への向き合い方に感銘を受けた。

潤は雪組から昨年9月に宙組へ移った。雪組時代から、真風の包容力にあこがれていた。その真風から「ありのままでぶつかってきて」と言われた。真風自身「うそ偽りなく」を主義としており、潤も追従する。

「最初から真風さんが大きく手を広げてくださっていた。温かいお言葉、自分に『うそ偽りなく』真風さんに向かわせていただけています。劇場でも普段も、ありのまま。一番ニュートラルな自分で存在できていて、すごく新鮮で、新しい世界を見させていただいているなと感じています」

身長165センチは娘役としては高い。「真風さんが心も体も、とても大きな方なので、ご一緒させていただく身として、恥じない見栄えで日々、研究していきたい」と感謝する。

宙組新トップ娘役に就き、初の本拠地作に臨んでいる潤花
宙組新トップ娘役に就き、初の本拠地作に臨んでいる潤花

北海道出身も珍しい。小学2年の時からクラシックバレエを習い、活発な少女だった。コンクールへの出場を重ね、勉強のため、クラシックバレエ以外の舞台見学を母に勧められた。

「たまたま、蘭寿とむさん(主演の花組)のオーシャンズ11を見て、皆さんがお上手すぎて、母に『女性だけじゃなかったよ。男性もゲストで出ていた』って言ったぐらい(笑い)」

すっかり魅了され、続いて、柚希礼音主演の星組公演「ロミオとジュリエット」を観劇。当時星組にいた真風も出演していた。「私はここに入りたい! と。ドラマや映画が大好きで、お芝居がしたかったので」。家族からの了承も得て受験し、一発合格した。

宝塚にあこがれた少女時代、その舞台にいた真風の相手娘役に就く幸運。

「感謝、幸せな気持ちでいっぱいですが、その分、心して隣に立たせていただかなければ。真風さん自身が『心にうそがない』方なので、私自身も心にうそなく。感じたことは、素直にお伝えし、自分自身に仮面を着けずにいたい」

体調管理、食生活に留意し、責任感も強まった。「煮詰まった時は、長い距離を歩くようになりました」。健やかな心の維持にも努め、全力で真風を追う。

真風から「こういうコンビに-というのは、その日、その日に生まれるもの」とも言われ、心に染み入った。「真風さんと一緒に新しい物を見つけ、一緒に走らせていただきたい」。新たな世界へ、スタートを切った。【村上久美子】

◆ミュージカル「シャーロック・ホームズ-The Game Is Afoot!-」~サー・アーサー・コナン・ドイルの著したキャラクターに拠る~(作・演出=生田大和) 英小説家コナン・ドイルが生み出した名探偵シャーロック・ホームズが主人公。宿敵となるジェームズ・モリアーティ教授は芹香斗亜、潤花は主人公の心を動かすアイリーン・アドラー役。

◆タカラヅカ・スペクタキュラー「デリシュー!-甘美なる巴里-」(作・演出=野口幸作) スイーツをテーマにしたパリ・レビュー。

<「デリシュー」見どころ盛りだくさん>

スイーツがテーマのショーは「私だったら1回(の観劇)では足りないほど、盛りだくさん」と感じている。真風とのデュエットも、もちろんある。「(トップコンビとして)大劇場で初めてのデュエットダンス。緊張もありますが、楽しみな気持ちも。心して挑みたい」と備えて臨んだ。ちなみに、自身が好きなスイーツは「全部好きですけど、止まらないのはチョコレート。とくにホワイトチョコとか、好きです」。

☆潤花(じゅん・はな) 9月19日、北海道旭川市生まれ。16年入団。雪組へ配属。清楚(せいそ)な娘役らしさが注目され、2年目だった17年「ひかりふる路」で新人公演初ヒロインに抜てき。19年「PR×PRince」で宝塚バウホール、「ハリウッド・ゴシップ」で東上公演初ヒロイン。昨年「炎のボレロ」で全国ツアー初ヒロイン予定も、コロナ禍で大阪公演に変更。同9月に宙組へ移った。身長165センチ、愛称「かの」「じゅんはな」。