月組新トップ月城かなとが来年1月1日、兵庫・宝塚大劇場で、本拠地お披露目作「今夜、ロマンス劇場で」「FULL SWING!」の開幕を迎える。相手娘役に2年後輩の海乃美月を迎えた新コンビで、新年をスタート。「宝塚の2022年初日でもあり、勢いを(次に)渡せるようスタートダッシュを」と意気込んでいる。宝塚は同31日まで、東京宝塚劇場は同2月25日~3月27日。

   ◇   ◇   ◇

ノーブル、気品-。下級生時代からタカラジェンヌの基本的な資質を磨いてきた月城がトップに就き、本拠地お披露目作で、2022年のスタートを切る。

「1月1日から公演をさせていただく。新しい組がスタートする。何よりも、宝塚としても(新年)幕開きの公演なので、勢いを次の組へ引き継げるよう、全力でスタートダッシュしたいと思っています」

新生月組を率いた初日が元日。月城は「『やるしかない。やるかっ!』と、そこに向けての準備と覚悟を蓄えている感じです」と言い、備える。すでにトップ初主演作「川霧の橋」を博多座で終えた。大羽根を背負い、ファン前に立った。

「まずこんなに重い…責任の重さ-その通りでした。でも、階段を下りる時に感じるのは、感謝の気持ちなんですよ。毎日『ありがとうございます』と思える瞬間を頂けて幸せでした。それはこれからも変わらないと思います」

星組の礼真琴、花組の柚香光とトップ2人は同期。自身はトップ就任を伝えられた時、「喜びというよりも驚きと、今までに感じたことのないような責任感を感じた」と振り返る。

今作稽古も「今、気負って変えたりする必要はないかな。組のみんなもいつも通りでいてくれる」。新人時代から、落ち着いているように見えた月城。「でも内心は全然そうではなく。緊張しすぎて(そう)見えるのだと思います」と言う。

迷い苦しんだときは背を追った元トップらOGに相談。2人の同期トップの奮闘にも励まされたという。「私(トップを)やったことがないので(笑い)。緊張、プレッシャーを感じるのは仕方がない。うまく付き合えるように」と心のコントロールも心がける。

今作の芝居は、綾瀬はるかと坂口健太郎で18年に公開された映画「今夜、ロマンス劇場で」を舞台化。映画監督志望の健司が、モノクロ映画のヒロイン美雪と奇跡的に出会い、心通わせる様を描く恋愛劇だ。

「健司は基本的に自信がない…そこは、すごく似ています。でも、やると決めた時の決断力、スピードの速さは近いかな。(役柄は壁を)乗り越えて進むエネルギーがある。(新生月組で)この作品をやる意味を感じていただけて、等身大で演じられると思います」

09年に入団し雪組配属。17年に月組へ移った。組替えは転機のひとつだ。

「自分のことを知らない世界に飛び込むって、あまりない。なりたい自分を作れる環境に飛び込ませてもらえて、ありがたかった」

下級生時代から芝居心にも定評のあった月城。毎回、役に自分を近づける“接点”探しに腐心する。

「雪組時代は(組全体に)体当たりで自分をさらけ出す空気があって、月組では自分で考え、練習してきて(稽古場で)出す感覚。今、自分で考える個人の力に、皆でやる力が合わさったら、もっとパワフルな組になるんじゃないか」

目指すトップ像は模索中だが、信念に揺るぎない。

「自分1人でトップになれて、存在していけるわけじゃない。(トップ就任で)自分の中で何かが完成されるわけではない。自分自身がトップとして、男役として完成したわけじゃない。皆の力でトップにさせてもらっているという気持ちは忘れないでいたい」

全員で新生月組を築く。

「皆の力を借りて、トップとして役目を全うした時に組がどう変わったか、この人はこうだった-と思ってもらえる。今まで通り、作品に向かう姿勢は変わらず、でも誰よりも舞台を楽しみ、作品を愛する思いを大切にしていきたい」

ショーは全編ジャズを軸にした大人っぽさが特徴になりそう。「私もファン時代に、色気のある大人っぽいショーが好きだった。お芝居と全然『色』が違うのも楽しみ」。自分のペースで歩むトップの道。新生月組を背負い、新たな1歩を踏み出す。【村上久美子】

<娘役海乃美月を信頼>

相手娘役に迎えた海乃は新人公演や別劇場でもヒロイン経験が豊富。「皆さんも(海乃には)強い、硬質な美しさといったイメージがあると思うんですけど、実はとても繊細」。重厚な作品での共演経験が多く「(得た役を)絶対に物にするという強い気持ちを持っている子」と信頼を置く。「(トップコンビとなり)これまでと違う緊張もあるでしょうが。お互い楽しんで舞台を作っていこうといつも言っています」。絶好のパートナーを得た。

◆ミュージカル・キネマ「今夜、ロマンス劇場で」(脚本・演出=小柳奈穂子) 18年公開のヒット映画を舞台化したファンタジー作。映画監督を目指す助監督の牧野健司(月城かなと)が主人公。映画館「ロマンス劇場」を舞台に奇跡的な出会いを描く。健司が何度も見た古いモノクロ映画のヒロイン美雪(海乃美月)が、現実世界に現れ、ひかれあっていく。

◆ジャズ・オマージュ「FULL SWING!」(作・演出=三木章雄) 月城、海乃コンビ誕生を祝い、ゴージャスなプロローグで幕開け。バラエティーに富んだジャズ・ショー。

☆月城(つきしろ)かなと 12月31日、横浜市生まれ。09年入団。雪組配属。13年「Shall we ダンス?」で、新人公演初主演。15年「銀二貫」で宝塚バウホール初主演。17年2月、月組へ。18年「THE LAST PARTY」で東上初主演、同年「エリザベート」でルキーニ。今年は、春日野八千代さん初演の「ダル・レークの恋」で東上主演し、8月16日付でトップ就任。身長172センチ。愛称「れいこ」。