宝塚歌劇団の花組公演「うたかたの恋」「ENCHANTEMENT(アンシャントマン)」が、元日に兵庫・宝塚大劇場で幕を開け、新年初日から花組トップ柚香光が麗しい軍服姿を披露した。公演は10日にいったん止まったが、19日から再開した。宝塚は30日まで、東京宝塚劇場は2月18日~3月19日の予定。

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幕が上がると同時に現れた真っ白な軍服のルドルフ、白いドレスのマリー。おなじみの赤色に仕立てられた大階段に、柚香とトップ娘役星風まどかの姿が浮き上がり、2023年の宝塚歌劇がスタートした。

芝居は故柴田侑宏氏が83年に初演し、再演が重ねられる「うたかたの恋」。オーストリア皇太子ルドルフと、男爵令嬢マリーの心中事件をもとに、愛を描く宝塚歌劇名作のひとつだ。

将来を嘱望されたりりしい皇太子の光と影。マリーを「小さな青い花」と名付けるロマンチストでありつつ、寝室に骸骨とピストルを置く狂気を内在した青年を、柚香は繊細な役作りで表現した。

今作は小柳奈穂子氏が潤色・演出に入り、新曲も追加。衣装も、歴代ルドルフに比べ、華美さを抑えて比較的シンプルに作られた。

初日前々日だった昨年12月30日に大劇場で最終の通し稽古。大みそか1日をはさんでの元日幕開けに備えた。柚香は、開幕前のインタビューで、正月への厳かな思いも語っていた。

「(元日の舞台は)きゅっと帯を締め、襟をただすような。お正月のピーンとはりつめた空気が好き。背中を押され、ただされる感じ。1年の初めって、自分の血を洗い流すような(笑い)。身の引き締まる思いとともに、心が洗われる」

気持ちも新たに公演に臨んでいたが、残念ながら、公演関係者から新型コロナウイルス感染者が出て、10日から一時休演。苦難も乗り越え、19日に再開した。

芝居では、4月に専科へ異動する人気スター水美舞斗が、ルドルフのいとこジャン・サルヴァドル役。自由な愛に生きるがゆえ、柚香演じるルドルフから「理想」とされる貴族を熱演。ルドルフに次ぐ王位継承者フェルディナンド大公には永久輝せあがふんし、ハプスブルク家に生きる葛藤を表現した。

ショーは野口幸作氏の作・演出で、柚香の名前から着想した「香り」「香水」がテーマ。柚香、星風のダンサーコンビによるデュエットはもちろん、水美、永久輝に続き、美しさが増し進境著しい聖乃あすかは女役にも挑戦。アイドル性に磨きがかかる帆純まひろら、“香り高き”花組メンバーがそれぞれに個性をアピールしている。【村上久美子】

◆おことわり 公演日程については変更の可能性があります。最新情報は、宝塚歌劇団の公式ホームページなどで確認ください。