TBS「NEWS23」の小川彩佳キャスター(C)TBS
TBS「NEWS23」の小川彩佳キャスター(C)TBS

TBS「NEWS23」(月~木曜午後11時、金曜午後11時半)の新キャスター、小川彩佳さん(34)が、6月3日の初日に述べたあいさつの言葉です。

スマホで簡単に情報にアクセスできる時代に、「テレビをつけて番組をのぞきに来てくれた皆さん」に向けた本音のメッセージ。もっと優等生な定形スタイルで来ると思っていたので、「半分お布団」とか、自分の言葉で語る姿が新鮮でした。「報道ステーション」(テレビ朝日)を7年務めた華と才気に親しみやすさが加わり、バランスの良さに好感が持てます。放送の最後には、土下座の勢いで「明日もよろしくお願いします」と、机におでこをゴチン。新天地で発揮している個性とスキルを頼もしく見ました。

4月にテレ朝を退社したばかりで、放送時間の一部が「報ステ」と裏かぶりするライバル番組へ。おきて破りとも言える電撃的な局間異動ゆえ、有働由美子キャスターの「news zero」(日本テレビ)の時のような華々しいPR会見もできず、明らかな宣伝不足の中でのスタートとなりました。ネット上も、賛否以前に「いつの間にか23が変わってた」と、リニューアルを知らない人多数。視聴率も初回4・3%、4日4・0%、5日3・9%、6日4.5%という状態です。

TBS「NEWS23」(C)TBS
TBS「NEWS23」(C)TBS

数字的には苦戦の船出ですが、内容には挑戦と工夫があると感じています。

初日の特集コーナーのテーマは「分断の言葉」。小川さん自身が「口にするのもはばかられる」という中傷ワードが飛び交うネット言論の現状について考える、攻めた内容でした。いきなり何だと面食らいつつ、報道番組のメインキャスターとしてまず本丸の「言論」を押さえておこうというガッツには信頼が置けました。

批判精神があり、見たくないものにもしっかりフォーカスするという点では、初代キャスター筑紫哲也さんのイズムも感じます。実際、看板コーナーだった「異論反論オブジェクション」も復活させています。

翌日は、AI時代の人材育成をテーマに、ソフトバンクグループ孫正義会長にインタビュー。小川さんに「ファンです」とデレデレの孫会長というのも新鮮で、カリスマ経営者が求める天才像なども聞き応えがありました。サカナクション山口一郎さんの話も面白かったですね。オープニング曲の担当者という内輪な人選ではありますが、スタート週とあって、出てくる人もいろいろカラフルです。

TBS「NEWS23」(C)TBS
TBS「NEWS23」(C)TBS

演出にも工夫がいろいろ。新海誠×サカナクションのオープニング映像に加え、スタジオの新セットも目を引きます。金色のパイプオルガンの中みたいというか、歌番組のセットっぽいというか。ゴールドだけどケバくはないという大人シンブルな雰囲気が、小川さんの格調と合っている感じ。番組タイトル、ミニ気象情報、ニュースの小見出しを画面上部で帯状に見せる画面デザインもすっきり。16:9のワイド画面を生かした作りで、小川キャスターの画面映えに一役買っています。

zero、報ステ、ミタパンの「Live News a」(フジテレビ)、テレビ東京「ワールドビジネスサテライト」など、さまざまなタイプが並ぶ夜ニュースのラインアップの中で、6月改編というイレギュラーなタイミングで始まった新生「23」。認知度を上げ、視聴習慣がつくまで内容で頑張るしかありません。こうなったら小川版「多事争論」も見てみたいという本音もありますが、ひとまず小川さんの踏ん張りに注目したいと思います。

【梅田恵子】(ニッカンスポーツ・コム/芸能記者コラム「梅ちゃんねる」)