新年度のテレビ界。いよいよ来週から4月期の春ドラマが各局でスタートする。増殖を続けるドラマ枠は今期も3枠増。もはや放送枠とタイトルを把握しきれないドラマファンも多いのでは。春ドラマ43本を無料で同時配信、見逃し配信するTVerの小原一隆氏(45=元ドラマプロデューサー)に、今期の注目ポイントを聞いた。

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-今期のラインアップを見てどんな印象ですか。

小原 毎日がミステリー、サスペンスというくらい、このジャンルがめじろ押しですよね。月曜から強コンテンツがそろっていて、フジテレビ月9は木村拓哉さん主演の「風間公親-教場0-」(4月10日スタート、月曜9時)。待望のレギュラー化で、あの風間公親が今回も警察学校を舞台にどんな教官像を見せてくれるか楽しみです。続く10時枠は天海祐希さん主演の「合理的にあり得ない~探偵・上水流涼子の解明~」(17日スタート、月曜10時)。リーダーを演じることが多い天海さんだけに、松下洸平さんとのバディものは新鮮です。どちらの枠も原作ものをしっかり作ってくることは間違いない。

オリジナルのミステリーも豊富です。どう転ぶか分からない感じで気になるのは、高畑充希さんと田中圭さんがダブル主演するテレビ朝日系「unknown」(18日スタート、火曜9時)。あの「おっさんずラブ」のチームが、連続殺人事件をめぐる夫婦のサスペンスをどう描くのか期待しています。TBS日曜劇場「ラストマン-全盲の捜査官-」(23日スタート、日曜9時)も外せません。福山雅治さんと大泉洋さんの共演も豪華ですし、脚本は黒岩勉さん。期待しかありません。

-ミステリー、サスペンス系はほかにもまだまだあり、ミステリー好きには選択肢豊富な春ですね。高齢者層向けの「金曜8時のドラマ」枠を「ドラマ8」にリニューアルしたテレビ東京も、その第1弾は福士蒼汰さん主演の「弁護士ソドム」(28日スタート、金曜8時)で、やはりリーガルサスペンスです。

小原 いきなり若者向けの枠になって驚きました。テレ朝さんが火曜9時枠を若者向けにした「星降る夜に」(主演吉高由里子)が成功したことも刺激になっているのでは。この挑戦がどう出るか、未知数だけに気になります。

-不倫やセックスレスなど、禁断の夫婦ものも多いですよね。日本テレビが金曜深夜0時半に新設したドラマ枠第1弾「夫婦が壊れるとき」(主演稲森いずみ、7日スタート)もドロドロの不倫もの。韓国版(「夫婦の世界」)も話題になった英ドラマ「女医フォスター 夫の情事、私の決断」のリメークです。やはり不倫もの、夫婦のドロドロものは一定のファン層がいるのでしょうか。

小原 TVerの再生数を見ても、不倫もの、夫婦ものは配信に強いという印象です。1月クールの“オトサツ”(テレ東「夫を社会的に抹殺する5つの方法」)も各話平均100万再生を超えているはず。テレビ大阪さんの「わたしの夫は-あの娘の恋人-」も不倫系でしたが、50万回以上再生されていて、たぶんテレビ大阪さん史上いちばん回っていたと思います。

奈緒さんと岩田剛典さんがセックスレスのテーマに挑むフジ「あなたがしてくれなくても」(13日スタート、木曜10時)は、「昼顔」チームの制作。三竿玲子プロデューサーが満を持して西谷弘監督と作る作品で、フジテレビ的にも力の入るところだと思います。

-テレ朝が4月から日曜10時をドラマ枠にし、日テレとのドラマ対決になっています。テレ朝は主演清野菜名さんと脚本岡田恵和さんのタッグで挑む「日曜の夜ぐらいは…」(30日スタート)、日テレは若林正恭さんと山里亮太さんの青春時代を高橋海人さん、森本慎太郎さんが演じる「だが、情熱はある」(9日スタート、日曜10時半)。

小原 テイストがまったく違うので、どんな戦いになるのか。テレ朝さんの新枠は、実績のある脚本家さんでいい話を、という枠になると聞いていますが、明日から仕事だ、という日曜の夜に正座して見るテイストだと好き嫌いが分かれそう。若者層は、日テレさんの方に興味があるのかなと思います。

-1月期に「リバーサルオーケストラ」(日テレ)と「スタンドUPスタート」(フジ)がどちらも高評価だった水曜10時対決の方はどうでしょう。日テレは芳根京子×重岡大毅の「それってパクリじゃないですか?」、フジは波瑠×高杉真宙の「わたしのお嫁くん」で、ともに12日スタートのガチンコ対決です。

小原 フジの水曜10時はこれまで男性主演の枠としてやってきましたが、今期は波瑠さん主演で、女優対決になっちゃってるんですよね。「ズボラ女子」というと綾瀬はるかさんの「ホタルノヒカリ」を思い出しますが、このジャンルが好きな人をうまく取り込めれば。日テレさんは「知的財産」をテーマにしたバディもの。個人的に法律系は好きなので、おもしろそうだなと(笑い)。日テレ水曜枠らしい、生き生きとしたお仕事ドラマになると跳ねそうな気がします。

-テレビ離れで視聴率が見込めない中、配信収入に強いドラマコンテンツはテレビ局にとって期待値が高く、ドラマ枠は増える一方。今期も3つの新枠と1つのリニューアルという状況です。俳優の掛け持ちやネタのかぶりも常態化していて、ドラマファンとしては複雑な心境でもあります。

小原 TVer上で配信する春ドラマだけでも43本。原作も取り合い、キャストも取り合い、脚本家も取り合いですよね。映画「ハケンアニメ!」で日本アカデミー賞優秀脚本賞を獲得した政池洋佑さんは、この4月クールで3本も担当しています。日テレ月曜深夜の「春は短し恋せよ男子。」、テレ東水曜深夜の「俺の美女化が止まらない!?」と、金曜深夜の「シガテラ」ですね。ドラマ界もすごい時代になりました。

-もはやどの局でどんな新ドラマがあるのか、把握しきれません(笑い)。

小原 TVerでは一覧からご覧いただけますので、活用していただければ(笑い)。予告特集で予習もできますので、リアルタイム派の方も、配信派の方も、春ドラマを満喫してほしいと思います。

【梅田恵子】(ニッカンスポーツ・コム/芸能記者コラム「梅ちゃんねる」)