NHKの教育番組「できるかな」の「ノッポさん」として知られた俳優で作家の高見のっぽ(たかみ・のっぽ)さんが22年9月10月に心不全のため死去していたことが10日、分かった。88歳。「グラスホッパー物語」で71歳の歌手デビューを果たした高見さんを06年にインタビューした。あのノッポさんそのままの優しい笑顔が印象に残る。

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「できるかな」のノッポさんは、もはや昭和の心象風景のひとつのような人。番組を見て育った子どもの1人だと伝えると、あのノッポさんの笑顔で「うれしい!」と迎えてくれて、どんな質問にも好奇心満々で耳を傾けてくれた。

同曲は、公園の片隅でおじいさんバッタが3匹の孫バッタに若き日の冒険譚(たん)を語り「まだ見ぬ世界へ飛べ」と背中を押す物語。自ら歌詞を書き、歌い、踊った。パントマイムで培ったダンスに加え、しゃべるノッポさん、歌うノッポさんのメッセージは大きなインパクトがあった。キャリアのほとんどを子ども世代に注いできた人。子どもや、かつての子どもたちの反響が「みんなのうた」史上初の8カ月ロングランを後押ししたことに「こんな気分のいい仕事は初めて」と感激していた。

30代から54歳まで「できるかな」のノッポさんとして日本の子どもたちに愛された。同時に、俳優としてのキャリアがひとつのイメージで固定されることにもなったと思う。高見さん自身、この曲に自分を重ねた1人だった。「ノッポさんを大事にするあまり、悪役を遠ざけたこともあった。僕も冒険し損なったおじいさんかも」。そう語ってくれた優しい笑顔を今も覚えている。

インタビューの最後は「子どもたちには、思い切り飛んでもらいたいよね!」。どこまでも子どもへの愛があふれた人だった。いい番組をありがとうございました。

【梅田恵子】(ニッカンスポーツ・コム/芸能記者コラム「梅ちゃんねる」)