東方神起が2日、日本デビュー10周年記念ツアー「WITH」ファイナル公演を東京ドームで行った。日本でゼロから地歩を固め、「海外アーティスト初」の冠が付く記録を数多く塗り替えてきた10年だった。メモリアルな日にユンホ(29)から、活動の一時休止を思わせる意味深な言葉も飛び出した。

 アンコール3曲目「With Love」の時だった。ステージ上の大型スクリーンに、ファンやスタッフのメッセージが次々と映し出された。ユンホは号泣。その目は真っ赤だった。「皆さん、本当にありがとう」。相棒のチャンミン(27)が震える肩をそっと抱いた。

 「幸せな時にしか泣かないと決めていたのに。今日は皆さんのおかげで幸せでした」。イメージカラーの赤いペンライトに染まる約5万5000人に、ユンホは感謝の言葉を続けた。

 伝えたいことは、まだあった。「東方神起の単独ライブツアーでは、しばらく会えません。元気に待っていてください。その時に『ただいま』と言ったら、『お帰り』と言ってください」。念を押すように「必ずここで会いましょう。約束だからね!」と続けた。

 韓国では原則として、数え年30歳の誕生日を迎えるまでに軍隊に入隊する義務がある。ユンホは現在29歳(数え年30歳)。リミットのタイミングだ。ステージで「兵役」「入隊」などの言葉は使わなかったが、ニュアンスは伝わってきた。

 東方神起は04年に韓国デビューした翌年、日本に本格進出した。ユンホは当時から「いつか東京ドームでコンサートをしたい」と公言していた。韓国では若きスターだったが、日本では「J-POPの新人」とあえて位置付け、小ホールから活動を開始した。不安で眠れぬ日々もあったが、次第に人気も上昇。気が付けば、公演会場の規模も日本武道館、東京ドームと一気に拡大していた。

 憧れだった東京ドームのステージに立つのも海外アーティストとして初の4年連続。12年から毎年実施中の全国ツアーの動員数は4年間で275万人。海外アーティストとして突出している。シングル売り上げ枚数425万枚も海外アーティスト歴代1位。アルバムやミュージックDVDなどと合わせると約913万枚で約329億円(オリコン調べ)。いずれもトップクラスの数字だ。

 偉大な記録も、鮮明な記憶を刻み込んだ。日本デビュー10周年ツアーを締めくくるこの日、約3時間半で27曲を披露した。今後、ライブ会場で2人にしばらく会えないかもしれないが、その心と音楽は、ツアータイトルに込めたように、いつもファンのそば(WITH)にいる。【松本久】