市川猿翁一門の歌舞伎俳優から今年1月、劇団新派へ入団し、新派俳優へ転身した市川月乃助(47)が4日、大阪市内で、2代目喜多村緑郎(きたむら・ろくろう)襲名興行について、取材会を開き、新派転身への思いを語った。

 月乃助は88年、猿翁の弟、市川段四郎に入門。市川段治郎を名乗り、04年にはスーパー歌舞伎「新・三国志3」で猿翁(当時・猿之助)の代役に抜てきされるなど、182センチの長身を生かして、一門期待の若手立役として活躍してきた。11年12月に月乃助を襲名し、歌舞伎以外の舞台やテレビにも出演。新派にも出演を重ね、今年1月から新派へ所属を移した。

 「師匠からも『やるなら徹底的に』と言われましたし、変な感情ではなく、4代目(猿之助)さん、香川照之さんが市川中車として、本筋として、師匠筋に入っていかれた。脇として支えていく道もありましたが、師匠からも『あなたは光り輝く存在だ。もっともっと自分を突き詰めなさい』と言われていたこともあり、新派に身を投じようと決めました」

 月乃助が新派へ出演を始めたのも、自身が襲名したのも、香川照之が「市川中車」として活動し始めたのも、11年だった。

 そこからほぼ5年。自分の立場を明確にした月乃助は、新派、新演劇の礎を作った「喜多村緑郎」の名跡を継ぐことも決めた。

 新派は現在、水谷八重子、波乃久里子ら女優陣が引っ張っており、月乃助には、正統派二枚目の看板役者としてのけん引役の期待もかかっている。

 「僕自身、入ったばかりですが、そうも言っていられない。若い人を育て、次の世代へつなげていく『喜多村緑郎』になりたい。将来的には、旦那(猿翁)がなさったような『スーパー歌舞伎』のような物を、新派で作っていければ」と話した。

 襲名興行は9月1~11日に東京・新橋演舞場、同17~25日に大阪松竹座。口上のほか、昼の部は「振袖纒(ふりそでまとい)」「深川年増(ふかがわどしま)」を、夜の部は「婦系図(おんなけいず)」を上演する。