【ベネチア(イタリア)5日(日本時間6日)=杉山理紗】福山雅治(48)が、コンペティション部門に出品されている主演作「三度目の殺人」(9日公開)の公式上映に、是枝裕和監督(55)や共演の役所広司(61)広瀬すず(19)と出席した。

 会場は、収容1000人のメイン劇場。観客は上映中、弁護士と殺人犯、被害者の娘による心理戦が展開する作品を、食い入るように静かに見つめた。上映が終わり、エンドロールが上がり始めると、それまで場内に漂った緊張感あふれる静寂から一転、大きな拍手に包まれた。スタンディングオベーションは約6分間にわたって続き、4人は立ち上がって賛辞に応えた。

 福山は4年前、是枝監督と初めて組んだ「そして父になる」でカンヌ映画祭の公式上映に出席した際、上映後の観客の反応に感極まって男泣きした。この日は最後まで穏やかな笑顔を見せて拍手に応えていた。終了後、福山は「予想よりも早い段階で拍手が起こった。いい届き方をしたんだなあと思いました」と笑顔を見せた。さらに「(観客の反応を見た)監督が僕の膝に手を置いてくださった。ほっとしたのかなと思い、僕もほっとした。うれしかったです」と感動を分かち合った様子だった。

 役所は上映後に場内で「いい映画ですね。誰の映画ですか」と是枝監督に向かって冗談を言う余裕もあった。広瀬は「上映中は緊張感がありました。生のリアクションがエネルギーになる」と振り返った。

 サスペンス初挑戦の是枝監督は「どう届くか心配して見ていました。解き放たれてほっとしています」。ベネチア映画祭は初監督作品以来22年ぶりの参加。「成長した姿を見せることができたかな」と手応えを感じた様子だった。