宝塚歌劇団の元星組トップスター、女優北翔海莉(ほくしょう・かいり)が4日、大阪市内で、谷崎潤一郎の戯曲「恐怖時代」、泉鏡花の戯曲「多神教」(6月30日、京都芸術劇場 春秋座)の取材会を開き、故美空ひばりさんのような「時代劇ミュージカル女優」を目指すと話した。

 北翔は宝塚時代、いったん専科を経て、星組トップに就いた異色スターで、歌、日舞に洋舞の踊り全般、芝居と3拍子そろった実力派トップとして活躍。プライベートでも多くの習い事を経験し、和物の評価も抜群に高かった。

 退団後は女優に転身。今回、宗家藤間流家元の「藤間勘十郎文芸シリーズ其の三」として、2月半ばに東京公演を終えた「恐怖時代」「多神教」に出演。登場人物が殺し合い、次々と命を落とす「恐怖時代」では、お銀の方を好演。太守の側室で、家の乗っ取りを謀る「悪役」を演じきった。その京都公演を6月に控えている。

 今作で共演する三林京子から「和物をしっかりとできる女優を目指しなさい」と言われ、北翔は「演技者としての引き出しを増やしてもらった」と感謝。

 「今の芸能界を見渡したとき、かつての美空ひばりさんのような歌って踊って、立ち回りもして、男役もできるスターがいない」と気づいたという。

 北翔は「ブロードウェーとか、洋物ミュージカルはたくさんあるけれど、時代劇ミュージカルは少ない。かっこいい和物がやれる女優を極めたい」と考え、女優としての目標をひばりさんに定めたと語った。

 宝塚では、男役は一人前になるまで10年かかるとされ、在団中、「男役10年」の節目で悩んでいるとき、藤山直美の演技に魅了され「追っかけをしてきた」とも明かした。

 現在は闘病で休業している藤山直美とも連絡をとっており、女優転身後も激励された。「かたじけない(笑い)。そんな気持ちで背を押された」と、直美にも感謝する日々だ。

 今回、「恐怖時代」で演じる腹黒い「お銀」は「私ならではのとらえ方で、切なく悲しい気持ちを抱えている面も見せます」と話していた。