話し下手を自覚する身としては、人心を掌握する巧みな話術にすごくひかれます。

 演歌歌手川中美幸(62)が3月31日、東京・江東区の深川不動で、新曲「深川浪速物語」の歌唱奉納を行った際のトークは見事でした。話す内容はもちろんのこと、声の抑揚や間の取り方など、聞く者の心をつかんで離しません。

 例えばこんな内容です。

 春といえば桜の季節です。「私は演歌界のソメイヨシノ。やがて、しだれ桜になり、そして、うば桜になりますよ」。

 容姿について。「きれい!」と掛け声が飛べば「ありがとう。よく言われます」と笑わせた後で、「『美幸ちゃんは見ていて飽きない』ってよく言われるんですよ。美人は飽きるもんね」。

 男性から「美幸ちゃん、頑張れっ」とエールが届くと「あら、私にホルモンが出ているのかしら? フェロモンでしたね」。

 ファンから「昨年亡くなったお母さんへ」と品物をプレゼントされると、「本当にありがとうございます」。一拍の間を置いた後で「父も(天国に)いるんですけど…」。

 新曲のCD購入を客席に呼び掛けたら「いっぱい持っているよ」の声が返ってきた。「えっ、いっぱいあるの? じゃあ、そろそろ新曲に切り替えてね」。

 「明るく楽しく」がモットーで、常に笑顔を絶やさない川中。イベントに駆けつけた約1000人を何度も笑いの渦に巻き込んだ洒脱(しゃだつ)なトーク術を学ぼうと思います。