松岡修造の著書「弱さをさらけだす勇気」(講談社)の発売記念トークショーを取材した。イベント前に報道陣向けの囲み取材を行い、会場を転換した後、同じ場所でトークショーを行う流れだった。

 囲み取材は定刻通りに始まり、サービス精神旺盛な松岡の熱すぎるトークで大いに盛り上がった。終了後は会場転換のため、報道陣は一度外に出されて待機となった。

 出版関係者によると、松岡はこの会場転換時に控室に戻らず、会場で自ら椅子を並べていたという。狭い会場でファンと報道陣が共存できるよう、事前に椅子の配置を考えたのも松岡だったそうだ。さらには、マイクなしでも音声を拾えるかどうか、事前に音声さんらと直接話し合いもしていた(通常であれば会場関係者の仕事だが「自分は前後左右に動きながら話すし、トークショーをする人の声の大きさで確認したほうがいいでしょう」という気遣いらしい。結果、前後に大きく動く松岡の場合はピンマイクを付けたほうがきれいに音が拾える、ということが発覚した)。

 同関係者は「こんな人は見たことがありませんよ」と驚いていた。

 転換後、報道陣は再び中に案内された。トークショーが始まるまでには、少し時間があった。通常、タレントは開始時間まで控室で待つのだが、松岡は会場に残り、ファン1人1人を出迎えていた。開始まで時間をもて余しているファンに話しかけに行ったり、道に迷って遅刻したファンをあえていじったりと、ファンとの距離感を大切にしていた。

 会場の壁には、「弱いが勝ち!」「崖っぷち大好き!」「強くなくたっていい!」「弱さ、ありがとう!」など、手書きの“修造語録”がたくさん貼られていた。これもファンを楽しませるための松岡のアイデアだという。会場到着後に1枚1枚、毛筆で手書きしたそうだ。トークイベント時には「皆さん、何かほしいのあります?」と聞いてまわり、手ではがしてファンにプレゼントしていた。

 やると定められたことだけをするのではなく、来てくれるファンや取材に来た報道陣、さらにはイベント関係者にまでも「少しでも気持ちよく過ごしてほしい」と願う、松岡の“無償の真心”を感じた。