約300万円と低予算で製作され、東京都内の劇場2館から公開がスタートしたインディーズ映画「カメラを止めるな!」(上田慎一郎監督)が、北海道から鹿児島まで全国100館の劇場に公開が拡大したと28日、発表された。

 これまでは、映画を製作した新人監督と俳優の養成スクール「ENBUゼミナール」が配給してきたが、25日にアスミック・エースとの共同配給が決まり東京・TOHOシネマズ新宿、TOHOシネマズ日比谷など全国40館の劇場で拡大上映が決まったと発表されたばかりだが、さらに拡大した。

 28日は、関東周辺が台風12号の暴風域に入ったが、上田慎一郎監督(34)、主演の濱津隆之ら主要キャストは山梨県富士河口湖町で行われた「第4回 2018 富士 湖畔の映画祭」に参加。一方、東京・渋谷のユーロスペースでは、劇中でカメラマンを演じた山口友和が自主的に上映後の舞台あいさつを行った。ユーロスペースではこの日、145席のスクリーン2で2回上映されたが、いずれも満席で、1回目は25人、山口が舞台あいさつを行った2回目は22人も立ち見が出た。

 山口は登壇すると「台風の中、たくさんの方に来ていただいたということで、みんなを代表してあいさつさせていただきます」とあいさつした。そして、新人の上田監督が17年4月にオーディションでメインキャスト12人の俳優を選び、映画の製作を前提としたワークショップを開催したこと、同年11月に新宿K’sシネマで6日間限定で行われたイベント上映を行い、それがSNSなどの口コミで話題を呼んだことで、6月23日から同劇場と池袋シネマ・ロサでの公開につながり、その後、爆発的な人気を呼んだことなど、これまでの経緯を説明した。

 そして「見ていただいたお客さまからの温かい応援と口コミで、本当に広がりまして今日、全国100館での公開までいきました。本当にありがとうございます。監督、キャスト含めて、驚きを通り越して、あぜんとしております」と感謝すると、客席から拍手が起きた。

 山口は、8月3日からTOHOシネマズ日比谷で「ハン・ソロ/スター・ウォーズ・ストーリー」、「ジュラシック・ワールド/炎の王国」とラインアップに並び、上映がスタートすることについても触れた。「とんでもないこと。ちょっとした事件。『カメラを止めるな!』の製作費で『ハン・ソロ』が2秒しか撮れないと話題になっているくらい小さな映画が、皆さんの力で大きくなった」。ワークショップに参加した俳優の受講料とクラウドファウンディングで集めた150万円強などを含めた、約300万円と低予算で製作されたことについて、ジョークを交えて触れつつ、観客に感謝した。

 山口は舞台あいさつ後、劇場のロビーで観客の写真撮影や握手の求めに応じた。行列は20分にわたり、途切れなかった。「あと2回は見ます」、「また来ます」という観客の声に、山口は「明日も、出来れば舞台あいさつに立ちます」と笑みを浮かべた。

 6月23日の公開後、山口のようにキャスト、製作陣が連日、各劇場で舞台あいさつを行ってきた。手弁当で自主的に登壇するもので、ギャラなどは発生しないが「全国で満席が続き2度、3度と劇場に足を運んでくださったお客さまも少なくない。恩返ししたい」(山口)という思い、作品を広げたいという純粋な熱意に突き動かされて、上田監督をはじめ関係者が毎日、劇場の舞台に立つ。映画を作った側、演じる俳優陣、見る観客全ての熱意が、2館から全国100館に公開が拡大した要因だ。

 上田監督は、自身のツイッターで「2館から100館へ…まだまだ増え続けています。こんなん誰が想像できたってのよ。僕らの想像をどんどん超えてくる。すごいよ映画って!すごいんだよ映画って!僕らの想像を遥かに超えるぐらい、映画ってすごいんだ! 映画!」(原文のまま)と興奮気味につづった。

 山口も舞台あいさつ後「2館から100館に広がるなんて、本当に奇跡の映画。その奇跡を起こしてくれたのは、見てくださったお客さま」と改めて感謝した。台風12号の暴風雨にも負けず、劇場で満席が続く「カメラを止めるな!」の“奇跡”は、まだまだ続きそうだ。【村上幸将】