約300万円と低予算で製作され、東京都内の劇場2館から公開がスタートしたインディーズ映画「カメラを止めるな!」(上田慎一郎監督)が、北海道から鹿児島まで全国124館の劇場に公開が拡大され、大ブレイク中だ。上田慎一郎監督(34)とワークショップなどを経て作品をともに作り上げた俳優陣が、ニッカンスポーツコムのリクエストに集結し、作品への熱い思いを語った“カメ止め座談会”スタート!!【聞き手・構成=村上幸将】

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 「カメラを止めるな!」は、新人監督と俳優を養成するスクール「ENBUゼミナール」の映画企画第7弾。上田監督が13年に小劇団の舞台に着想を受けて発案した企画を元に、17年4月にオーディションでメインキャスト12人の俳優を選び、映画製作を前提としたワークショップを開催。上田監督が12人を当て書きする形で登場人物を描いた脚本を書き、その直しとリハーサルを繰り返し俳優とともに作り上げた。

 17年11月に東京・新宿K’sシネマで6日間限定で行ったイベント上映で面白さが話題を呼び、その後、国内外の各映画祭で評価されたこともあり、6月23日から同劇場と池袋シネマ・ロサでの公開が決定。公開館が少ないこともあり“最も見ることが難しいと言っても過言ではない映画”と全国で上映を待望する声が相次ぐ一方、脚本が緻密で、見た観客も映画の内容を語ると即、ネタバレになることから“ネタバレ厳禁”の合言葉が飛び交った。7月25日に、アスミック・エースがENBUゼミナールとの共同配給に乗り出すと発表され、全国で124館の公開が決まった。3日段階で約6万7000人を動員した。

 -ここまで全国に拡大した今の思いは?

 山崎俊太郎(32=山越俊助役)みんなに感謝しています。

 合田純奈(24=栗原綾奈役)舞台あいさつが終わってから、足が震えだしました。あの時は全然、震えていなかったのに…すごいことが起こったなと。一生、見られない景色を見せていただきました。皆さんに感謝です。ありがとうございまず。

 細井学(59=細田学役)(全国での拡大)公開は3日から始まったので、これから、この作品が、どんな景色を見せてくれるのか、楽しみにしています。

 大沢真一郎(41=古沢真一郎役)我々のような多分、皆さんが最初、ご存じでないような役者しか出ていない映画に、こんなにも皆さんが見に来てくださって、ただ、ただ感謝しかありません。本当にありがとうございます。

 長屋和彰(30=神谷和明役)無名という言葉を、あまり僕たちが使いたくはないですけど…無名の役者しか出ていない作品に、アスミック・エースさんのような大きな会社が協力してくれて、TOHOシネマズで公開できて、あれほどお客さんに見て、満足してもらえている。今は、この現状を、よりこれからもずっと持続していきたいと思っています。

 市原洋(32=山ノ内洋役)上映後“カメ止め愛”を感じました。(劇中にも登場する)「ONE CUT OF THE DEAD」のTシャツを着ている方はいて、それもすごいなと思ったんですけど、上田監督の誕生日に、みんなでサプライズで贈った「悪魔のいけにえ」のTシャツや(監督の日暮隆之役の)濱津隆之さんの劇中衣装のアロハを着ていた方もいて、すごい…言葉にならないくらいビックリしました。

 藤村拓矢(30=藤丸拓哉役)自分がこんな大舞台に、本当に立つ日が来るとは…。いつかは、やりたいとは思っていましたけど、こんな身近に来るとは思っていなかった。スタンディングオベーションとか、始まる前に拍手が巻き起こった時には、本当に感極まったりもしました。本当に夢のような舞台に立たせていただいた方々に感謝です。

 浅森咲希奈(23=松浦早希役)まだ夢の中にいるみたいで…現実なのかが、まだ追いついていないです。ですけど…感謝の気持ちでいっぱいです。ありがとうございまず。

 吉田美紀(36=吉野美紀役)私は、ENBUゼミナールの監督コースをきっかけで、この企画を知りました。上田監督自身も知らなかったし、みんなも知らなかった。でも…運命という言葉は、あまり好きじゃないんですけど、そう感じざるを得ない恵まれた仲間たちだと感じました。見ている時に、16歳の高校時代の気持ちに戻るんですよね。何度でも若返る、フレッシュになれる映画です。

 佐渡未来(35=子役の母役)ワークショップのメンバーで2つに分かれて、私はちょっと呼ばれただけだったんですけど、みんな友達で、いい人で…みんなが有名になっていくのがうれしくて、関わらせてもらえただけで、私は本当にありがたいと思っています。

 曽我真臣(35=テレビ局員役)毎日、舞台あいさつに顔を出させていただきました。メーンの方に(舞台あいさつに)いっぱい来ていただきたいなというのがあって、僕みたいな脇役が一生懸命やったら、みんなやる気になって、もっと来てくれるんじゃないかな? という少し狙いがあって、毎日頑張ろうと思ってやっていました。

 真魚(26=日暮真央役)こんなに、たくさん上映館が増えて、本当にうれしいので。バックステージものですので(映画)業界ではない音楽家、ミュージシャンの人とか、いろういろな文化の方に、「カメラ」の部分を自分の仕事に置き換えてもらって、自分の今やりたいことが出来ないとか、昔やっていたことを再開してもらえたら、すごくうれしいですね。

 竹原芳子(58=笹原芳子役)ビックリしています。私は大阪なので…若い人、東京の人が毎日、舞台あいさつに行ってくれていて…(涙)本当に、みんなSNSとか頑張ってくれていて、私は出来なくて好きな時にやっている感じなんですけど…本当にありがたい。大阪でも、しばらくつきあっていなかった人から連絡があって、何かすごいことになっているなと。本当にありがたいです。

 しゅはまはるみ(43=日暮晴美役)同い年の友達の男の子の役者からLINEが入って…その子は病気をしちゃって1度、芝居を辞めて地元の鳥取の実家に戻っていたんですよ。ようやく病気が治って「俺、もう1回、頑張るよ」と言って、ついこの間、東京に戻ってきたんですね。鳥取では「カメ止め」やっていなくて「やっと、はるちゃんの映画、見られるわ。今日、見てくるから」って昼の回に行ってくれて。「はるちゃん! すごいよ! やったな! 頼むからブレイクしてくれ」って来たんですよ。私、もう今年44ですし、私も何回か諦めたりもして、でもやり直したりとかもしているので…。そういう友達も、ずっと一緒に小劇場界でやってきた仲間もたくさんいるので、ブレイクしなくちゃ、いけないなって。その人たちの期待と、夢と、希望を背負わなきゃ多分、ウソだな…って思うような、この映画にかかわれて本当に幸せだし、今、何となく責任も感じていますね。

 山口友和(40=谷口智和役)本当に小さな映画だったんですけど、皆さんのおかげでここまで大きくなった。奇跡の瞬間に立たせていただいたのは、見ていただいたお客さまのおかげです。心からありがとうございます。

 次回は、キャスト陣が「カメラを止めるな!」について、存分に思いを語る。