東京都内の劇場2館から全国190館に公開が拡大した映画「カメラを止めるな!」(上田慎一郎監督)を製作、配給した株式会社ENBUゼミナールは21日、同日発売の写真週刊誌「FLASH」が報じた著作権侵害疑惑について「本記事の見出しに掲載されているような、法的に『著作権侵害』が生じていたり、『パクった』といった事実はございません」などと否定する声明文を発表した。

 「FLASH」は、上田監督が映画を作るにあたり着想、影響を受けたと語る舞台「GHOST IN THE BOX!」を上演した劇団PEACE主宰の和田亮一氏を取材し、作品に類似点があるなどと指摘した。

 和田氏も同日午前にクリエイターが投稿するサイト「note」に、「FLASH」の取材を受けた思いをつづった。その中で「GHOST IN THE BOX!」は、11~14年に上演され、劇団の脚本家志望の後輩と一緒に企画案を練り、その後輩に脚本を任せ、稽古しながら四苦八苦しながら脚色して出来上がったものだと紹介。劇団が14年に解散後、上田監督と親交のあった劇団員との間で、舞台の映像化企画が持ち上がり、脚本を書いた後輩の劇団員を交えて企画を始めたものの頓挫したと明かした。

 和田氏は「カメラを止めるな!」が6月23日から東京都内の劇場2館で公開された件を、元劇団員の後輩から聞いて7月初旬に見たところ、舞台の名前がクレジットに書かれていなかったことに疑問を抱き、上田監督に原作として劇団名と舞台名を入れるよう依頼も、同監督から「確かに最初は一緒に進めたし、あの舞台を参考にしたがそれは一旦頓挫し最終的には全く別物になったので『原作』と入れることはできない」と言われたとつづった。

 その後、全国に拡大公開が決まったタイミングで上田監督とプロデューサーに会ったところ、妥協案として「原案」としてクレジットに劇団名、作品名を入れ、その後原作かどうかは判断する話になり、エンドロールに入ったものの「でも僕は、ただ、『原作』と入れて欲しかったんです。元劇団員のみんなが『あの作品PEACEの芝居が原作なんだよ!』と、素直に応援して、自慢できるようにしたかったんです。『原案』は作品を作るに当たって参考にしたアイデア、『原作』はその作品を作るための元の作品です」と主張した。

 ENBUゼミナールは、「FLASH」の報道を受けて、舞台から着想を受けて映画を企画、製作したことを認めた上で「記事の内容は不正確なものです。(中略)本映画は上田監督自身による脚本。監督、編集というように、本舞台とは独自の形で製作を進め、ストーリーは本舞台と全く別物である上、脚本の内容も異なるものですから」と否定した。

 和田氏は、製作側から「PEACE『GHOST IN THE BOX!』は今回の映画における『原案』として整理しました」という連絡と、今後の映画、舞台におけるリメイクそのほか二次利用に関する一切の権利をもてないという内容の「よくわからない原案利用契約書」(和田氏)が送られてきたと明らかにした。さらに「最初に協力した劇団員二人には『企画開発協力』というなんかよくわからないクレジットにして、ヒットした後もちゃんとした契約や謝礼の話は一度もないらしいです」ともつづっていた。

 ENBUゼミナールは「本舞台関係者の方々と都度協議を行っており、クレジットを含めたその他の条件や今後の対応についても協議を進めようとしていたところでした。それにもかかわらず、このような『著作権侵害』や『パクった』といったようなセンセーショナルな見出しや、未だ確定もしていない本舞台関係者との協議過程の内容を含む記事が掲載されたことに強く憤りを感じます」と「FLASH」の報道を批判した。

 上田慎一郎監督(34)はこの日、TOKYO MX「5時に夢中!」(月~金曜午後5時)に、映画に出演した女優しゅはまはるみ(43)と生出演。「毎日がフィーバーなところがある。いろいろなニュースが、いろいろな意味でフィーバーしている」などと語った。

 一方、和田氏はツイッターで「原作者が怒りの告発」と題した同誌の報道について「怒りの告発とありますが、決して怒っているわけではありません。こうなる前になんとかする方法もあったのでは無いかとも思っています。だけど、僕が声を上げることで、同じようにもやもやしている人たちにも届けばいいと思っています」(コメントは原文のまま)と率直な思いをつづった。