2018年のテレビドラマ界。その目玉となったのが、4月期のテレビ朝日「おっさんずラブ」だ。平均視聴率4%。数字的には失敗作といわれる水準でありながら、感動コメディーがSNSで社会現象化。ツイッターの世界トレンド1位、流行語大賞、映画化決定など、半年たった今も圧倒的な話題性を放っている。

<「おっさんずラブ」貴島彩理プロデューサー(28)に聞く>

-放送前に今の人気は想像していましたか。

貴島 いえ。いまだに信じ難いです(笑い)。6話でツイッターの世界トレンド1位と聞いた時も「世界?」という感じでした。視聴率はよくなかったので、最終話が終わった後の反響や記録や受賞を受けてやっと実感がわきました。

-視聴率、録画視聴率ともにいまひとつでありながら、SNSでは世界トレンド1位を2度獲得し、配信やDVD予約数はテレ朝の新記録。流行語大賞にも選出され、来夏には映画も公開されます。ドラマのヒットの定義を変える作品だったと思います。

貴島 SNSの力が大きかったことは間違いないですね。全国で知らない人同士が手を組んで応援してくださった印象があります。最後は「6話で世界一とったのに最終回でとれなかったらかわいそう」と、弱小野球部や地下アイドルを応援するような運動が起こって、視聴者の中の宣伝部みたいなものができていたのはびっくりしました。

-物語と連動した武蔵部長(吉田鋼太郎)のインスタ「武蔵の部屋」のフォロワーが40万人を超えるなど、SNS戦略は事前にかなり練ったのですか。

貴島 そうですね。でも、これまでの担当作品も同じくらいSNSは頑張っていたので、何か戦略勝ちしたというより、時代の方が変わったような印象があります。

-「おっさんずラブ」の成功で、「視聴率はとれなくても配信やSNSで結果を出せばいい」という制作者の声も聞きます。

貴島 視聴率以外の指標がもっとあったらという思いはどの制作者にもあると思います。私自身「おっさんずラブ」を通して、こんな報われ方もあるのかと勉強になりました。でも、数字をとっている番組って、やっぱり面白いんですよ(笑い)。どちらかだけが正解ではない。どちらも今後の目標です。