日刊スポーツ映画大賞の授賞式が昨年12月28日に行われ、18年の映画界を彩った数々の名優たちが、名誉あるステージで喜びを語りました。

華々しい舞台の裏では、主催する日刊スポーツの社員が総出で進行、ゲストのアテンド、取材と大わらわ。普段とはまったく違う業務の数々に、使わない脳みそをフル回転して臨みました。アクシデント防止のために出演者の動線を確保したり、本番中に台本が変わることもあります。17年は石原裕次郎新人賞を受賞した竹内涼真がインフルエンザで欠席するなど、直前のハプニングに肝を冷やしました。そして18年も…。

主演女優賞を受賞した安藤サクラ(32)が、授賞式に出席できなくなったのです。NHK連続テレビ小説「まんぷく」の収録が、予定より長引いてしまったためで、この日は大阪で終日収録となってしまったのです。

安藤は今年、カンヌ映画祭で最高賞パルムドールを受賞した「万引き家族」での演技が国内外で称賛を浴び、今回の映画賞でも文句なしの主演女優賞に選ばれました。そんな安藤が、晴れの場を託したのが、映画で安藤演じる信代らの一家が保護する少女りんを演じた佐々木みゆ(7)でした。

物語の舞台は、貧乏ながらも楽しそうに暮らす柴田家。夫をリリー・フランキー、妻を安藤、祖母を故樹木希林さん、子供役を松岡茉優、城桧吏、そして佐々木が、それぞれ演じました。一見、3世代の普通の家族に見えますが、実はそれぞれが複雑な事情を抱え、元の家から離れて身を寄せ合っている、いわゆる疑似家族です。とはいえ、もともとは芝居ですから、出演者の劇中の関係は、仕事を離れたそれと似ています。

ところが、控室で見た出演者、スタッフの関係は、まるで実の家族のように見えました。佐々木はリリーを見つけると、膝の上に乗っかり、学校であったことなど近況を報告。うんうんとうなずきながら、聞き入るリリーの姿は、パパらしくてほほえましい姿でした。終演後の佐々木は、是枝裕和監督に向かって2度、手を合わせて続編をおねだり。監督が「こりゃ、作らないといけないなぁ」と頭をかく姿は、まるでお年玉をねだられる親戚のおじさんのようでした。

佐々木は撮影当時6歳でしたが、1年たって劇中より少し表情が大人っぽくなった印象でした。それもそのはずです。この1年で、カンヌの公式上映など、数々の舞台を経験したのですから。この日の授賞式も、緊張しながら、安藤の代役をしっかり務めてくれました。最後に、式の感想を聞いてみると…。

「カンヌよりも緊張しました。でも、今までで一番、緊張したのは…入学式です」

カンヌより入学式とは、何とも不思議な感性。将来が楽しみです。