約300万円と低予算で製作されながら、興行収入30億円超と日本映画史に残る大ヒットを記録した映画「カメラを止めるな!」(上田慎一郎監督)が、東京・新宿K'sシネマと池袋シネマ・ロサで封切られた18年6月23日から公開200日を迎えた8日“聖地”池袋シネマ・ロサで記念舞台あいさつを行った。

上田慎一郎監督(34)は舞台あいさつの最後に、涙で声を詰まらせながら1つのエピソードを語った。テレビ番組に出演した際に口にした言葉「ONE CUT OF THE LIFE」(人生は1カット)が書かれた1枚のシャツが届き、すごい長い手紙がついていたという。その手紙には「今度、すごい難しい手術を受けます。生死に関わる…生きられないくらいの手術を受けます。このTシャツを、お守りにして手術を受けます」とつづられていたという。

上田監督は「手紙を遅れて見ちゃって、手術日が過ぎちゃっていた」と振り返った。そして「『頼む!』と思いながら連絡したら『生きています。『カメ止め』が諦めない、挑戦する気持ちをつけてくれました』と返ってきました」と、手紙を送ってきたファンが難しい手術を乗り越えたと語り、声を詰まらせた。そして「自分たちが作ったものが200日の間、誰かの力になったんだと胸が熱くなった。僕らで自分のため、みんなのために作った映画が誰かの力になった。いっぱい、いっぱい映画を作り(俳優陣にも)いっぱい、いっぱい出て欲しい。いつか、部活(『カメ止め』の上映、フィーバー)は終わりますけど、今日の光景は心に残る」とあいさつした。

この日は初日と同じ、午後8時45分の上映後に舞台あいさつを行った。上田監督は客席を見渡し「ほぼ満席! 初日より多い。(初日は)100人いるかいないか」と喜びつつ、振り返った。それでも「初めての人います?」と聞くと、客席で2、3人が手を上げた。それを見た上田監督は「実写は50年の歴史の中で最高? 劇場最高記録です」と、200日連続上映が同劇場における実写の連続上映の最高記録だと紹介した。

これまで、節目の舞台あいさつには台風の直撃を受けてきた。全国100館での拡大公開決定が発表された同7月28日は、台風12号が関東周辺を直撃。その中、上田監督と主演の濱津隆之ら主要キャストは、山梨県富士河口湖町で行われた「第4回 2018 富士 湖畔の映画祭」に参加。同監督が「上映中に直撃し雨音がすごくて結構、聞こえないし大丈夫かなと思った」ほどの風雨だった。東京・渋谷のユーロスペースでは、山口友和が道路が一部、冠水するほどの暴風雨を押し舞台あいさつした。

池袋シネマ・ロサで公開100日記念舞台あいさつを行った9月30日にも、台風24号が関東に接近し、首都圏で午後8時以降にJRの在来線全線が順次、運行を取りやめていく中、キャスト、スタッフ17人で舞台あいさつを行った。10月1日に予定された大阪のイベントが中止となり、急きょ駆けつけた上田監督は「公開200日はスケジュール、空けておいてください」と次の目標に公開200日を掲げた。節目で初めて晴れた舞台あいさつで“公約”を実現した。【村上幸将】