令和時代のブレーク芸人として注目されているのが、お笑いコンビ、EXITだ。札幌市出身の兼近大樹(28)は相方のりんたろー。(33)とチャラ男キャラで人気急上昇中で、現在は単独ライブツアーで全国7都市を回っている。

外見はチャラいけど、内面はチャラくない? 新世代の道産子芸人の素顔をのぞいてみた。【聞き手 西塚祐司】

金髪に目がチカチカするほどの派手な上着とダメージジーンズ。「バイブス、ぶち上げ~」というフレーズを入れてネタをするチャラ男系コンビ、EXITがノリにノっている。昨年出演したバラエティー番組「ゴッドタン」「ネタパレ」を機に人気に火が付いた。5月から回っている全国7都市の単独ライブツアーのチケットはすべて完売。会場での出待ちには何重にも人垣ができる。ライブや営業に引っ張りだこで、多忙な日々を過ごす。

兼近 芸人なんて毎日が休みみたいなもんですからね。ただ、ふざけてギャーギャー言ってるだけです。

見た目も発言もチャラすぎるイケメン道産子。だがその人生と内面は決してチャラくない。生まれた時から実家が「ハッピー貧乏」。中学まで打ち込んだ野球をあきらめ、卒業後は家計を支えるために新聞配達やとび職で働いた。

兼近 ビルの足場を組む仕事で冬はめちゃくちゃ寒い。足は壊死(えし)してるんじゃないかって思った。当時から勢いがすごかったので、いつケガしても良いやっていうスタンスでバチバチ組んでましたけどね。それが16~18歳、周りが高校に通ってる頃かな。

しばらくは地元の札幌でたい焼き屋やバー店員などの仕事を転々とした。だが芥川賞作家で事務所の先輩芸人、又吉直樹(39)の小説を読んだことをきっかけにお笑い界を目指すことを決めた。22歳で人生の再スタートを切った。

兼近 上京した当日にアルバイトの面接を受けた。朝はお弁当配達、昼はコンビニ、夜は居酒屋の3つを掛け持ち、寝るのは移動の電車くらい。バイト代は1カ月で50万円ほどで、NSC(吉本興業のタレント養成所)の学費にして入学しました。

芸歴5年目の17年に転機が訪れる。りんたろー。とコンビを組んだ。すぐにメキメキと頭角を現し「アメトーーク!」「ダウンタウンDX」など人気番組に出演した。知名度が上がった現在も、札幌時代から守るポリシーがある。自分がやりたいと思ったことしかやらないスタイルだ。

兼近 小さい頃は貧乏かましていたので、オモチャも進研ゼミも塾も無理で、やりたいことができなかった。だけど、大きくなったら自分が動きだすことで、やりたいことは何でもできるって気付いた。とび職もアルバイトの掛け持ちも、周りから見たらキツイと思われるけど、自分は苦労と思わないで全部楽しかった。目標があって、その過程でしたから。

5月には札幌で凱旋(がいせん)ライブを行った。150人の客席はすぐに完売した。

兼近 上京してから10年かかると思ってた。7年でできてラッキーって感じ。気持ちはいつもの渋谷でのライブと変わらないですよ。

ライブの終盤には母親が登場し手紙を読み、感動の場面もあった。腕で隠した目からは、光るものがあったように見えたが…。

兼近 記憶は定かではない。目からテキーラが出ちゃったんじゃないですか。全国ツアーはステップ。今後の目標は認知度でジャスティン・ビーバーと並ぶことですね。

約20人の親戚も駆け付けた凱旋ライブは爆笑に包まれて大成功だった。「人が嫌な気持ちになることはやりたくない」と言う一本筋の通った“チャラ男”に注目だ。

◆兼近大樹(かねちか・だいき)1991年(平3)5月11日、札幌市生まれ。よしもとクリエイティブ・エージェンシー所属。NSC(吉本総合芸能学院)東京19期生。13年に最初の漫才コンビを組んだが解散し、17年12月にりんたろー。とEXITを結成。少年時代は野球に打ち込み、中学時代は「1番・遊撃」で、主将として札幌市の大会で優勝した実績がある。独身。

○…兼近の5歳上の相方、りんたろー。も北海道にルーツがあった。生まれも育ちも静岡だが、母親は北海道生まれだった。芸人仲間からは「顔が大きい」とよくいじられている。「道産子のじいちゃんも顔が大きい。親戚はみんな小さいのに、何で俺だけ遺伝しちゃったかなぁ」と笑った。