ジャニーズ事務所社長のジャニー喜多川氏(享年87)は、1962年(昭37)の創業以来、数多くのタレントを世の中に送り出し、日本でのエンターテインメントの創出に力を注いできた。タレントの売りこみも自ら行い、担当記者にもいつも熱く語ってきた。そんなジャニー氏について、歴代のジャニーズ事務所の担当記者たちが悼んだ。

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ジャニーさんが相手に「ユー、○○しちゃいなよ」などと、相手に「ユー」を使うことが知られていたが、「ユー」はタレントにしか使わなかった。50歳近く下の記者に対しても必ず丁寧語。腰が低かった。関西人らしく、冗談が大好き。芸能界の大物だったが、威圧感を感じさせなかった。「ジャニーさんの好物は何ですか」などと、仕事とは関係ないことも気軽に聞けてしまう雰囲気があった。

一方、記者と接する時は何を聞かれても仕方がないと、覚悟を決めていたのだろう。あまり触れられたくないことを聞かれても、ジャニーさんなりの思いを聞かせてくださったが、タレントを責めるような発言は聞いたことがない。いつもエールを送るような、温かいものばかりだった。やさしい人柄がにじんでいた。

所属タレントに壁を作らなかった。小学生に対しても自主性を尊重した上で、やさしさと冗談を絶妙に交えながら指導していた。デビュー前のJr.に至るまで、ジャニーさんに対してはほぼ全員タメ口。親しみやすいようにとの心配りは、いつでもタレントが心を開いて話せるようにと願う親心だったと思う。

担当時代、繰り返し聞いた言葉は「若い子はすごい。いつも教えられる」。才能を発掘して育てる天才だったが、その姿勢は、いつまでも謙虚で純粋だった。【近藤由美子】