歌手で俳優の紘毅(33)の主演舞台「KAPPAN~ありがとう・ごめんなさい~」が21日、東京・豊島区の「大塚 萬劇場」で初日を迎えた。

バンドマンのギター&ボカル(紘毅)が中学時代に描いていた絵本のカッパ「カッパン」。友人に見つからないように何年も隠していたカッパンが、大人になった主人公やバンドメンバーらの悩みを解決に導いてくれるストーリーだ。

紘毅は「劇の役柄もバンドマンだし、20代後半当時の自分が言っていたのと同じ言葉がセリフになっている」と自身の経験と重ね合わせながら演じている。「劇中で、事務所の社長から『商業的なことも大切。同時に書きたいものも大切』というようなことを言われますが、シンガー・ソングライターとして曲を作っていた自分も同じことを言われました」。作品の作り手と売り手の立場。その両者を納得させて、良い曲を作り上げることには「今でも悩んでいます」と笑顔で明かした。

06年に「カエデ」で歌手デビューし、10年に映画「ラムネ」で俳優デビュー。以来、歌手と俳優の両輪のほか、バラエティー番組に出演するなど幅広い活動をしているが、あくまで軸足は歌手に置いている。「もちろん、いただいた俳優の仕事は全力でやりますし、演じることは楽しいです。でも、自分の中では歌手が優先なんです」。

父親は芸能界の大先輩・前川清(71)。デビュー当初は「前川紘毅」の芸名だったが、しばらくして「前川」を取ったのは「前川清の長男」と言われることへの反発が理由だった。「20代のころ、父の存在は『目の上のたんこぶ』でした。比べられるのも嫌だし、父とは普段、口もきかなかった」。だが、歌手として10周年を迎えるころから自身の中に変化が芽生えたという。「友人から『10年ってすっげーな』と言われるけど、オヤジは50周年。今の自分の5倍もやっているのかと思うと本当にすごい」。肉親としてでなく、芸能界の大先輩として、素直に尊敬の念を持つようになった。「オヤジに『大丈夫か?』と聞かれると『気にしないで』という言葉を返すのですが、前は『放っておいて』の意味だったのが、最近は『大丈夫だから心配しないで』に変わった」と話す。

11月9日に34歳になる。同月に大阪、福岡、東京でバースデーライブを行うことが決まっている。今後の目標を聞くと「何か1個でいいから、オヤジにすごいことをやっている姿を早く見せたい」。歌手デビューから13年。父の背はまだ遠い先にあるが「目標は日本武道館での公演。いつになるか分からないけど必ずやりたい」と誓った。

舞台は25日まで。