まるる、まるちゃんの愛称で、役者仲間からも人気の中村梅丸あらため初代中村莟玉(かんぎょく=23)が今月の東京・歌舞伎座「吉例顔見世大歌舞伎」で、莟玉としての披露舞台を踏んでいる。

いつも女形で見ることがほとんどだったが、披露狂言である「鬼一法眼三略巻(きいちほうげんさんりゃくのまき) 菊畑」では、奴虎蔵実は源牛若丸を演じている。愛らしさ若々しさを端々に感じさせながら、きりりと意思の強い役のキャラクターをうまく見せている。

劇中、師匠で養父中村梅玉(73)とともに口上に臨み「いまだ半熟不鍛錬ではござりまするが、なお一層芸道に精進してまいる所存でございます」と、謙虚でシンプルな言葉で決意を述べた。

先輩、後輩、同年代問わず、役者仲間の間でも、礼儀正しくて稽古熱心、という評判だ。実際、別の俳優への取材の時、莟玉の話題になると、決まってそんな言葉を聞いた。

11月30日からは京都南座「吉例顔見世興行」に出演し、昼夜合わせて3演目に出る。

近い身内に歌舞伎関係者がいない、いわゆる一般家庭出身の莟玉。中村隼人、中村橋之助、片岡千之助といった歌舞伎界のプリンスとともに踊る、夜の部「越後獅子」に注目したい。