日本を代表するチェリスト柏木広樹(51)が、大阪市北区の日刊スポーツを訪れ、自身10枚目となる新アルバム『VOICE』(10月2日発売)をPRした。「人間の声に最も近い音色」を奏でる楽器といわれるチェロと、柏木がリスペクトするボーカリストたちとの声のセッションを含む11曲を収めた。レコーディング中に「どんな楽器もそれぞれ演奏している人の『VOICE』ではないか」と気付いたという。

柏木の作曲スタイルは「まず風景を思い浮かべ、それに合うメロディーを紡ぎ出す」という。例えば9曲目『Dear Angel』は、フレーベル少年合唱団を迎えてのセッション。寒い冬に聴ける温かい曲を作りたいと、「雪を窓の外に眺めながら、室内でシチューを食べる風景」をイメージして作曲。少年合唱団の優しい声と柏木のチェロが、聴く者の心に温かく染み込む。

8曲目『Spirit of the Forest』は屋久島の雨の風景をイメージして作曲した。「水がなかったら生命は誕生していない、まさに命の源。自分の中に新しい命が吹き込まれるような気持ちになっていただければ」と話した。

1曲目はライフワークとして、アルバムごとに作曲してきた「ドリトル先生シリーズ」から、満を持して第1巻『アフリカゆき』を収めた。「ドリトル先生一家はどんなに苦労が絶えなくても、そこに心の平和が大きく息づいている」と、敬愛するザ・ハモーレ・エ・カンターレのコーラスに乗せて演奏した。

同様に3曲目『エミリの小さな包丁』も親交のある作家・森沢明夫の同名小説をイメージ。「物語に出てくる海の広がる風景。そして心がほっこりする読後感」を曲に込めた。

奄美大島の唄者・里アンナを迎えた4曲目『One』や、尺八演奏者・藤原道山を迎えて、酒の醸造される様をイメージして演奏する5曲目『羽根屋』。同じチェロ演奏者の植木昭雄との絡み合うようなセッションが印象的な10曲目『Voice』など数珠の名曲が続く。

アルバムに収められた11曲はそれぞれ個性が強いが、最後まで通して聴くと、1本の映画を鑑賞したようなストーリー性を感じる。盟友のピアニスト・光田健一のアレンジで一層、曲が輝きを放つ。

「ライブでぜひ聴いて欲しい。ライブハウスに集まった人が一緒に音楽を愉しむ。音楽はその時間を共有するためのスイッチみたいなもので、できるだけ多くの人の心に響く演奏をしたいです」と優しく語った。

新アルバムを引っ提げた記念ツアーの大阪公演は、1月21日にビルボードライブ大阪でゲストに里アンナを迎える。また1月16日は名古屋ブルーノート(ゲスト里アンナ)、3月7日は東京・渋谷区文化総合センター大和田さくらホール(同ザ・ハモーレ・エ・カンターレ)、3月27日北海道・札幌コンサートホール(同・藤原道山)。詳細は公式サイト(https://hirokikashiwagi.com/)を参照。